【密着】ベナンで「貧しい農家の役に立ちたい」と起業 有機野菜の販売に奮闘する息子へ届ける両親の想い
西アフリカに位置するベナン共和国で有機野菜を販売する綿貫大地さん(39)へ、千葉県で暮らす父・沢さん(74)、母・昭美さん(63)が届けたおもいとは―。
開業から3年。経営は順風満帆かと思いきや…
ベナンのアボメ・カラヴィという街で、有機野菜の直売所「アグリミッション」を経営する大地さん。ベナンにある300軒の農家と契約し、直接野菜を買い取って販売している。現地の人の平均月収は約5万円。そのため、高価な有機野菜を買ってくれる得意先は、高級レストランや富裕層が多いという。
大地さんは35歳の時、青年海外協力隊員としてベナンに赴任。農家を支援する中で目の当たりにしたのは、真面目に野菜作りに取り組んでも貧しさから抜け出せない農家の姿だった。まだまだ課題があると感じた大地さんは、協力隊の任期終了後も現地に留まることを決意し、「農家の役に立ちたい」とこの会社を起業。スタッフは地元の若者を含め4人。創業パートナーであり親友でもあるロメさん(30)が副社長を務めている。3年たってお得意様も増え、経営は順風満帆…かと思いきや、実はずっと赤字状態。「今年中には黒字に持っていこうと思っています。本当にあと少しなので」と話すが、その「あと少し」がなかなか難しいのだという。 一方、千葉県で暮らす父・沢さんと母・昭美さん。実は、息子とは「40歳になったら日本に帰る」という約束を交わしているそうで、「そろそろ帰ってきて、日本の生活に戻ってほしい」と昭美さん。沢さんも「ベナンへ行ったことは心配していない」と言いながらも、「本音は私も早く帰ってきてほしい」と帰国の日を待ちわびている。
希望が見える一方、両親と約束した期限が迫り…
5年前に出会ったロメさんは元々農家で、野菜農家グループのリーダーでもあった。しかも成績優秀で、奨学金を得て大学へ進学した地元の星。農家の期待を一身に背負っていた。そんな彼の人間性や仕事に向き合う姿勢に感銘を受けた大地さんが「一緒にビジネスしよう」と誘い、農家のため、ともに会社を営むことが2人の夢となった。いまや契約農家は300軒。これまで報われなかった農家の人々が育てた有機野菜を、大地さんとロメさんが都会で販売することで希望が見えてきたという。 こうしてベナンで奮闘する大地さんがずっと気にかけているのが、両親と交わした「40歳になったら日本に帰る」という約束。2年半前に結婚した妻の利香さん(31)も、「彼の目標に向かって頑張る姿に惹かれた」というものの、何十年もベナンに住み続けるとは考えていないという。間もなく迎える40歳の誕生日を前に、家族の想いと道半ばの仕事の間で揺れ動く日々が続いている。