主演に中山優馬。栗山民也演出、スペインの傑作戯曲『血の婚礼』
スペインを代表する劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカの三大悲劇のひとつとして知られる『血の婚礼』が、上演される。 この作品は、スペインのアンダルシア地方を舞台に、結婚式の日にかつての恋人と花嫁が駆け落ちし、名誉の回復のために花婿の弟が花嫁のかつての恋人を討ったという実際の事件をもとに書きあげられている。 アンダルシア地方は、フラメンコや闘牛といったスペインを代表する風物が生まれた土地だ。『血の婚礼』は、こうした土地の歴史や風土をベースに、伝統と因習に縛られた男と女の姿を描いていく。 演出は数多くの印象深い舞台を世に送り出している栗山民也。『ロスメルスホルム』『オーランド』『海をゆく者』といった海外戯曲から、こまつ座『夢の泪』『母と暮せば』など幅広い演目を手掛け、2023 年に旭日小綬章も受章した。特に緊張感のある深い心理描写には定評がある。 栗山にとって、アンダルシアの首都グラナダで生まれたガルシア・ロルカの『血の婚礼』上演は悲願とも言えるものだった。スペインの風土に深く根差したロルカの作品は、イプセンやチェーホフなど寒い国の作家の作品とは異なる魅力があると、かつてのインタビューでも語っている。 今回の公演に当たっても「(前略)そのグラナダで生まれたガルシア・ロルカの『血の婚礼』を、今回やっと上演することができる。あの丘の上のあの喉から絞り出すような熱く乾いた声、あの力強く踏み鳴らし続けるステップのリズム、そしてあの劇場をギュッと包み込んだ、むせ返るような濃い人間たちの欲望の輪を思いながら、心躍るままに創ろうと思う。ロルカに出会いたい、その一心で。」と、コメントを寄せている。 今回、かつての恋人である花嫁に強い情念を向ける男・レオナルドを演じるのは、中山優馬。自らが演じる役を「強くも卑怯で愛に溢れた男。多くを失い、多くを手に入れた男なのだと思います」と語る。 日差しが強ければその陰も濃い、と言う。アンダルシアの熱さとその陰に隠された人間たちの情念を味わってみよう。