がん発症リスク、2年間で10%痩せると2倍に増加「意図せぬ体重減少に注意して」
今回の研究内容への受け止めは?
編集部: アメリカのダナ・ファーバー癌研究所による研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。 明星先生: 今回の研究は医療従事者を対象としていますが、基本的には全ての人に当てはまる結果でしょう。意図しない体重減少があった場合には上部消化管がん、つまり、食道がんや胃がんのリスクが特に高くなり、大腸がんも多かったとのことですが、これは消化管に悪性腫瘍があり、吸収障害や通過障害が起こるので当然の結果と思われます。 血液がんの発症率も高かったとのことですが、悪性リンパ腫では腫瘍が全身に広がっていることが多く、体重減少を合併することも多いのです。急性白血病も同様に体重減少を合併することが多いので、その結果だと思われます。一方、乳がんに関しては肥満がリスク因子となっていますので、この逆と思われます。加えて、泌尿器がんや皮膚がんなど、食事と直接関係のない臓器にはこの傾向は認めにくいようですが、これも当然の結果と思われます。
今回の研究結果はどのように活かせる?
編集部: 今回の研究で、体重減少とがんの発症率との関係が示されました。この研究結果は臨床の現場で、どのように活かせる可能性があるのでしょうか? 明星先生: 今回の研究を臨床に活かすことはなかなか難しいところではありますが、体重も含めた日々のセルフチェックを定期的にモニタリングして、意図しない変化があった際には、積極的に悪性腫瘍のチェックをおこなっていくことが重要であると思います。その前提として、悪性腫瘍の発症率は年齢とともに高くなっていくので、症状がなくても定期的にがん検診を受けましょう。
編集部まとめ
アメリカのダナ・ファーバー癌研究所らの研究グループは、過去体重減少とがん発症との関連を調べた結果、2年間で10%以上体重が減少した人は、体重減少がなかった人と比べて、その後1年間の新規がん発症率が有意に高くなった。意図せぬ減少は、意図的な減量と比べて約2倍の新規がん発症率だった」と発表しました。がんは日本人の死因第1位でもあり、こうした研究は注目を集めそうです。
【この記事の監修医師】
明星 智洋 医師(江戸川病院) 熊本大学医学部卒業。岡山大学病院にて研修後、呉共済病院や虎の門病院、がん研有明病院などで経験を積む。現在は江戸川病院腫瘍血液内科部長・東京がん免疫治療センター長・プレシジョンメディスンセンター長を兼任。血液疾患全般、がんの化学療法全般の最前線で先進的治療を行っている。朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」などテレビ出演や医学監修多数。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本血液学会血液専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。
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