空気不要でパンクなし! 環境に優しい次世代タイヤ技術「エアフリーコンセプト」にメディアとして初試乗!
タイヤと言えば、これまでは空気を入れてそれが車体の荷重を支え、クッションの役割も果たすスタイルが常識だった。それが今、ブリヂストンが開発した、空気を使わない「エアフリーコンセプト」によって、その常識が大きく覆ろうとしている。エアフリーコンセプトとはいったいどんなタイヤなのか。試乗を通してその可能性を展望する。 【写真】エアフリーコンセプトを超小型モビリティ「ジャイアン」に履かせた姿がこちら!
車輪から始まるタイヤの歴史とは
タイヤの歴史を振り返れば、まず車輪としての歴史は古い。日本自動車タイヤ協会の資料によれば、最初に車輪を考案したのは紀元前3000年頃にチグリス・ユーフラテス河口域(現在のイラク)に居住していたシュメール人だったそうだ。木板を継ぎ合わせた酒樽の蓋状のものに心棒をつないだ簡単なものだったが、この実現によって輸送能力は飛躍的に向上することになったという。 その後、耐久性を高めるために車輪の周囲に鉄を巻いて使う時代が1900年ほど続き、日本でも大八車(だいはちぐるま)と呼ばれるスタイルが長く続いた。ゴムがその代用として考案されるのは1867年のことで、これはいわゆる空気を使わないゴム製“ソリッドタイヤ”である。ただ、硫黄を加えた加硫ゴムが使われたものの、当時のタイヤは耐久性が低く、速度が上がると発熱し、長く走ると熱でゴムが焼けてしまったそうだ。 そうした中、1888年に英国人の獣医ジョイ・ボイド・ダンロップによって、現在のタイヤの原形ともなる空気を入れたタイヤが考案された。実はこれに先立つ1845年に、同じ英国人であるロバート・ウィリアム・トムソンによって特許が取得されていたが、実用化にこぎつけたダンロップが事実上の空気入りタイヤの発明者とされている。それから130年以上も経った今も、空気入りタイヤはその主役の座を不動のものとしているわけだ。 そうした中でブリヂストンは、新時代のタイヤとしてエアフリーコンセプトを開発したのだ。
いざ、試乗! 空気タイヤと比べて感じたこととは?
では具体的に「エアフリーコンセプト」とはどんなタイヤなのか。言うまでもなく、タイヤは空気を高圧で膨らませることで車体を支えていたし、その空気はクッションとしての役割も果たしていた。ただ、充填されているのが空気である以上、何らかの原因で穴が開けばエアは漏れる。いわゆるパンクだ。それが、空気を入れなくて済むエアフリーコンセプトでは当然ながらパンクすることもない。また、路面に接するゴムの部分についても張り替え(リトレッド)で対応できるようになっている。 特に注目したいのが路面から受けたショックの吸収方法だ。今までの空気入りタイヤなら、充填されている空気がバネの代わりを果たすが、エアフリーコンセプトでは特殊形状スポークが衝撃に応じて変形することで衝撃を吸収する仕組みとなっている。つまり、このスポークの素材や造り込み次第で、乗り心地やその特性を変化させることもできるのだ。これがエアフリーコンセプト最大の特徴となる。 では、そのエアフリーコンセプトはどんな走行フィールを感じさせてくれるのだろうか。試乗に使った車両はタジマモーターコーポレーションの超小型EV「ジャイアン」。タイヤのサイズは145/70R12で、主として超小型モビリティなど、軽量な車両で使うことを前提に開発されたものだという。これを4輪すべてに装着し、東京都小平市にあるブリヂストンのテストコース「B-Mobility(ビー モビリティ)」で試乗した。 試乗方法は、最初に空気を入れた一般的なタイヤを装着したジャイアンに大人ふたりが乗車し、その後でエアフリーコンセプトを履いた別のジャイアンに乗り換える方法を採った。 エアフリーコンセプトで走り出すと、空気タイヤに比べてややゴツゴツとした硬さが伝わってきた。しかし、これは時速20kmを超えるぐらいから感じなくなり、空気入りタイヤとの差はほとんど感じなくなった。次に大きさを違えた突起を乗り越えるコースを走行すると、もちろんこの突起を乗り越える際の衝撃は伝わってくるものの、思ったほどショックは感じない。空気入りタイヤとの差はほとんどなく、これはスポーク部分の変形が、いわゆる“いなし”効果を十分に果たしている証拠と言えるだろう。 次に連続するS字カーブでのハンドリングを確かめたが、空気入りタイヤとの差はわずかで接地感も上々で、むしろシャープさは空気入りタイヤよりも上回っているのではないかと感じたほどだった。これはスポーク部分の剛性がしっかりと作られているからと思われる。その意味では、このエアフリーコンセプトでは空気入りタイヤとの差が想像していた以上に近づけられていたと判断して良いと思う。