『紅の砂漠』期待のオープンワールドアクションは操作が複雑だから気持ちいい。緊張感に高速戦闘をプラスした、ソウルライクとは異なる高難度へのアプローチ
「まず、みなさんにはこのムービーを見てもらっているんですよ」 MMORPG『黒い砂漠』を運営するPearl Abyss Japan(パールアビスジャパン)のオフィスで筆者が見せられたのは、同社が開発中の新作オープンワールドアクションアドベンチャー『紅の砂漠』のチュートリアルムービー。先行試遊の前に、ゲーム内の基本的な操作方法を簡潔にまとめたものだという。 【記事の画像(32枚)を見る】 ちなみに尺は17分ある。 もちろん、動画の内容はそのほとんどが基本操作のみ。『紅の砂漠』は基本的な説明だけで17分も必要――ということである。マジか。YouTubeのファミ通公式チャンネルではプレイ動画を公開中。合わせてどうぞ。 ※開発中のバージョンのため、製品版とは異なる場合があります。 複雑だけど意外とやれちゃう。派手に魅せられる戦闘に大満足 『紅の砂漠』は、戦争に染まった中世ファンタジー風の世界を駆け巡るオープンワールドアクション。プレイヤーは傭兵として、広大なファイウェル大陸に降り立つことになる。 このゲーム最大の特徴は、ひりひりした緊張感を味わえる戦闘。動きは非常に細かく、それを実現するために操作コマンドがめちゃめちゃに多い。基本の武器攻撃に加え、突進、パリィ、キック、遠距離攻撃、魔法……果ては剣に光を反射させる目くらましにグラップル(投げ)まで。攻撃手段だけで(記憶しているだけでも)10種類以上はあったはずだ。 だからこその“チュートリアル動画17分”。正直、操作方法の説明を受けているあいだは「あ、無理だわコレ」という考えでいっぱいだった。 主人公と同じ顔で見てました。 ただ、そんな不安は最初の戦闘で吹き飛ばされることになる。試遊版では主人公クリフがいきなり屈強な蛮族に取り囲まれ、操作もおぼつかないまま多人数と戦うことになるのだが……これが意外に、“なんかできちゃう”のだ。 攻撃を盾で受けて、反撃して、蹴って、投げて、薙ぎ払って。わりと直感的に操作しているだけなのに、それっぽい立ち回りができてしまう。 恐らくそのキモは反撃の動き。盾で受けてからタイミングよくボタンを押してカウンター! なんていうのが戦闘における基本的な流れなのだが、そのタイミングがかなりわかりやすい。ガードボタン押しっぱなしで適当に攻撃ボタンを押すだけでも反撃に転じてくれる。 しかもゴリ押しも可能な模様。攻撃モーション中は敵の攻撃を受けてもほぼ怯まず、雑魚敵程度であれば強引に突破できてしまう。回避にそこまで意識を割くことなく、敵を薙ぎ倒せるのは非常に爽快だった。 モーションも派手。同じ攻撃ボタンを押していても複数のモーションにつながる。 胸に剣をぶっ刺す、トドメ用のモーションなんてものも。残虐さがまたいい。 とてもいい意味で、雑魚との戦闘はシビアにはなっていない。だからだろうか。複雑な操作もあまり気にはならないのだ。戦場は苛烈なのに頭にはどこか考える余裕があり、「つぎはあのモーションを試してみよう」と思いながらプレイができてしまう。操作内容は複雑なはずなのに、なぜか大雑把に遊べてしまうのが不思議だった。 同行したファミ通.comの編集者によると、「高難度と聞いていたからタイミングの見極めが重要なソウルライク系かと思っていたけど、がんがん攻撃してもらうことを想定した作りなのでは」。『黒い砂漠』はMMORPGながら戦闘は完全に3Dアクションで、それの進化版のように感じたとのこと。 とはいえ油断しているとふつうに死ぬんだけども。ただ、思っていたほどの難しさではない。 シビアじゃない……のは雑魚だったから。ボス戦に走る緊張感がたまらない 不安が晴れ、すっかり気分をよくした筆者だが……なにも今回の試遊は雑魚と遊びに来たわけではない。目的は4体のボスと戦うことだ。 とはいえ余裕でしょう。雑魚戦もなんかいい感じにできたしー、なんて軽い気持ちで挑んでみたら手酷くボッコボコにされた。やっぱりこのゲーム、難しいのかもしれない。 死体に刺さった剣を引き抜いて襲い掛かってくる。恐ろしい演出。 最初に戦ったのはスタッグロード。剣と盾で武装した、鹿のかぶりものがいかつい“蛮族の長”っぽいボスだ。体格はクリフより大柄だ。 こいつがなんともいやらしいやつで、広範囲の大ダメージ技やガードごと吹っ飛ばす攻撃を持ちつつ、さらにカウンターまで使ってくる始末。最初はモーションを見切ることすらできず屍の山を積み重ねることに。 敵の盾が光ったタイミングで攻撃するとカウンターをもらう……と説明されながら投げられるの図。わかっていてもなかなか慣れない。 ガードごと吹っ飛ばす攻撃は、モーションの前に赤い光が出る。光る演出は戦闘に派手さを出すだけのものではなく、ちゃんと意図されたサインとして用意されている。 図体がデカいからか、かなり体幹がしっかりしており、キックぐらいじゃビクともしない。投げも有効ではないようで、なかなか相手の体勢を崩す糸口をつかめずにいた。 しかしよく見れば攻撃モーションがかなり大振り。であればと回避を優先しつつ、チクチクと攻撃を積み重ねる方針で立ち回ってみることに。するとちょっとずつだが体力が削れていく。敵を攻撃するたびに手に持つ剣が血で染まっていき、それがなんともいえない高揚感を与えてくれる。細かい演出が憎い。 戦闘中に挟まるムービーも、こちらの気分を高揚させてくれる。演出がとにかくうまい。 フィールドにある壁にぶつかり、崩れた瓦礫がスタッグロードに当たって大ダメージが入る、なんて一幕も。崩れるのってただの演出じゃないの!? しかしどうしてもカウンターが見切れない。何度も倒されつつも、その度にその場での蘇生(恐らく試遊版のみの仕様)をくり返すことでぎりぎり撃破に成功。情けないゾンビアタックではあったが、一応スタッグロードに勝利を収めた。 その後、敵の死体近くに行ってほしいと指示を受ける。なになにと思い近づいてみると……。 この赤い剣と盾は! いいんですか、そんなことしちゃって。 敵の装備品を奪えてしまったではないか! 正直戦っている最中はずっと 「あの赤い盾かっこいいなあ……どうにか俺のものにならんかなあ」 と思っていたので、思いもよらぬご褒美にテンションが高まる。何度もカウンターを決められた憎い盾だからこそ、無性に愛着が沸いてしまうのもおもしろいところだ。話によると、“やりたいことを実現できる”のような感覚を大事にしているらしい。たしかに、敵が強い武器を持っていたら拾って使いたいもんな。 うれしい、とても。略奪は勝者の特権である。 そんなテンションのまま、つぎに挑んだのはリードデビル。片手剣の使い手で、俊敏な動きで近づいては無数の斬撃をくり出してくる。遠距離攻撃や搦め手も扱う、サムライ兼ニンジャのようなボスだ。 ビジュアルも相まって個人的にはかなり好きなボス。仮面って無条件でかっこよくなるのでずるい。 体力が減ってくると、居合の体勢から不可視の斬撃を飛ばしてくる。周囲の葦がどんどん切られていく演出も相まって最高にかっこいい。 こちらは投げやキックが有効で、敵の体勢をかなり崩しやすい。攻撃も軽く、うまくガードをしながらカウンター主軸で攻めていくのがいい感じにハマる。先ほど戦ったスタッグロードとはプレイしている手応えが違い、戦法もガラリと変わるのがおもしろい。なんなら“目くらまし”なんていう、ボスにはおおよそ効果がなさそうな小技まで有効に使える。 剣で日光を反射させて目くらまし! からのー…… 全力でぶん投げる! これがけっこう効果的。 ボスごとに攻略法が違う……なんてのはどんなアクションゲームにも通じる部分だが、『紅の砂漠』はその深みがまったく違う。回避主体かガード主体か。敵の体勢を崩す手段はなにか。アレは効く? これは使える? など、考える余地が非常に多い。尋常じゃないぐらいに攻撃手段が豊富だからこそ感じられるおもしろさだ。 中盤には、召喚したトーテムを破壊しないと本体にダメージが入らなくなるギミックも用意されている。戦闘の形が一定ではなく、飽きない。 しかもこれ、同じ人型であるスタッグロードとリードデビルと戦った時点での感想である。このゲームにはもちろん、ファンタジーらしい人外な化け物の方々もいるわけでして。 たとえば試遊版だと、ホワイトホーンなんてボスがいた。こいつはスタッグロードよりも強靭で、かつリードデビル並みの素早さで駆け寄ってくる。こちらの身を竦ませる咆哮まで持っており、非常に強力なボスとなっていた。 すでに戦ったボスふたりからは“対人戦”的なニュアンスを感じ取ったかと思えば、ホワイトホーン戦では突然“ハンティングアクション”風の空気が流れるのである。 雪山の化身みたいなとんでもないボス。たぶんいちばん苦戦した。 図体が大きいので、敵にしがみついて何度も突き刺すという、おおよそ人間相手には使えない戦法が使えたりする。弓でも狙いやすく、空中に飛び上がりながら無数の矢を連射するという、対人では微妙に使いづらかった技も有効に働いた。化け物には化け物用の戦い方がある。 空中で矢をつがえて一斉射。世界が一瞬スローになる演出も入る。かっこいい。 しがみついてひたすら刺す! 刺す! 刺す! これはこれでダーティなかっこよさがあると思う。 さらにおもしろかったのが、最後に挑んだ女王石殻ガニ。このボスに関してはもうルールから違う。ダメージを与えて倒すわけではなく、ギミックをこなすことで撃退できるボスなのだ。ボス戦=敵を倒すというだけではない。遊びの幅が感じられる内容と言える。 ビジュアルも最高! 無機物っぽい生き物が動く姿はまさにファンタジー。 冒頭に入るムービーでは、THE・三枚目な感じのキャラクターも登場。持っているピッケルからもおわかりかもしれませんが、こいつが余計なことをしたせいで石殻ガニが起きます。 そのギミックもおもしろい。まずは背中に乗って、弱点部位を魔法で破壊。背中に貼りついている間に敵が激しく動くと振り落とされたり、天高くまで打ち上げられたりする。うまく空中で滑空できるスキルを使いながら対処しなればならない。 全部の弱点を破壊し終えた後は、敵の頭上にあるツボの山を破壊すればクリアー……なのだが、そのためにははるか上空へと飛び、勢いを付けて降下しながら魔法を叩きこむ必要がある。 そこで使うのが、アイテム“スパイダーウェブ”を使ったグラップリングアクション。そう、ここにきてまた新たなアクションである。もう驚くまい。 しがみついての弱点破壊。でかい生き物の上を動き回るの、たのしい。 跳ね上げられたらカラスのような見た目に変身するスキルで対処。ビジュアル的にもかっこいいのでお気に入り。 そして、このアクションが当然のように難しい。ジャンプ(PSコントローラーだと□ボタン、XboxコントローラーだとXボタン)から下に向かって魔法(Rスティック押し込み)、そこからRで狙いをつけて、敵にうまく糸を貼り付けたら敵を中心に旋回して……と、やることがめちゃめちゃに多い。この形態に至ってから5分以上の試行錯誤を経て、ようやくとどめを刺せた。 ここに来てまったく違うアクションが要求されるのにはかなり驚いたが、そのぶん成功時の気持ちよさは格別だ。『紅の砂漠』の別側面にある楽しさが垣間見えた気がする。これだけアクションがあると、こんなにも自由に動き回れるものなのか。 目指すは頭上のツボ。位置が高いんだアレが。 大失敗の図。あまりにも遠すぎる位置を回っている。 壊せた日のことをしばらく忘れないと思う。それぐらい難しかった。 4体のボスすべてを討伐したことで試遊は終了したが、正直まだまだ全然プレイしたりない。技はまったく使いこなせた気がしないし、ボス戦は蘇生に頼りっきりになっていたため、もっといろんな動きを研究したい。 操作が複雑だと慣れるまでそれなりの時間がかかるもの。思い通りにキャラクターを動かせたときの楽しさは、数あるアクションゲームでも屈指のものだろう。今回触れたのは1時間強という短い時間だったが、そう断言できるだけのおもしろさがたしかにあった。 というか、そのおもしろさの片鱗に触れてしまったせいで、はやく全貌を見たくて仕方ない。頼む、せめてあと50時間ぐらい触らせてくれ。後生だから。いまもリードデビルのかっこいい攻略法とか考えてるんだから。 正直、カメラ操作はかなり微妙ではあった。カメラをキャラクター背面へ即座に動かせるボタンなどがあれば遊びやすくなると思う。こういった“見え方”についてはPearl Abyss側も把握しているようなので、つぎのバージョンでの改善に期待したい。 ……そんな願いをパールアビスのオフィスへ向かって飛ばしてしまうぐらい、今回の試遊はかなり鮮烈な体験だった。複雑だがほどよく大雑把で、気持ちのいいアクション体験。しかもやればやるだけおもしろいのがわかってしまったら、そういう気持ちにもなるというもの。まだ正確な発売日は決まっていないものの、手に入れられる日を心待ちにしたいと思う。