ウクライナ軍で広がる「光ファイバードローン」 元米海兵隊員が普及へ奔走
ウクライナの各方面に働きかけた
■ウクライナの企業や団体に働きかけ スマザーズは、ウクライナでのソリューションには低コストが求められるのを知っていた。一般的なFPVドローンは500ドル(約7万7000円)程度で、購入資金の大半は寄付で賄われている。5万ドル(約770万円)の攻撃ドローンを購入できる米陸軍とは違い、ウクライナには手ごろな価格のソリューションが必要だった。 スマザーズの試作機は、およそ360ドル(約5万5000円)の市販のドローンをベースに、2~3時間程度の作業で無線操縦式から光ファイバー操縦式に改造したものだった。ウクライナ企業のクラブ・テックが、設計を戦闘に適したものにするのを手伝った。 スマザーズはウクライナで接触できそうな関係組織にすべて接触した。それには、ウクライナ・エイド・オペレーションズ、テクノロジー・ユナイテッド・フォー・ウクライナ(開発にも協力)、ディフェンス・テック・フォー・ウクライナといったボランティア団体から、ウクライナ政府の防衛技術アクセラレーターである「ブレイブ・ワン」、ウクライナ国防省情報総局(HUR)の特殊部隊「クラーケン」などの軍用ドローンユーザー、ワイルド・ホーネッツ、ブイリー、ドローナルニャといったドローンメーカー、国営防衛大手のウクロボロンプロムまでが含まれる。 「200ドル(約3万円)弱しかかけずに、簡単なキットを取り付けるだけでFPVドローンを光ファイバードローンに改造できる方法を紹介しました」とスマザーズは話す。この経費には人件費は含まれていない。 スマザースは面会した相手に試作機を実際に試してもらい、どのように飛ぶかを見てもらった。また、よくある批判にも答えた。スプールなどの機構を追加すると重量が増えるものの、そのために弾頭重量を減らす必要があるほどではなかった。ケーブルは切れたり絡まったりせず、機動性は攻撃任務には十分すぎるほどだった。そして、数km離れた目標を容易に攻撃できた。 設計を伝えたり、基本的なハードウェアを提供したりしながら、スマザーズは各方面にFPVドローンを光ファイバードローンに改造するよう働きかけた。彼が売り込んでいたのはアイデアだけだった。プロジェクト全体はまさにチームワークだったとスマザーズは強調する。 話をした相手の多くが彼のアイデアを受け入れてくれた。それには敵側の不吉な動きも影響したようだ。ロシア軍は、試験していた光ファイバードローンを実戦で使い出していた。ソーシャルメディアに投稿された映像では、こうしたドローンが期待どおりの効果を発揮していた。光ファイバーのおかげで、FPVドローンは信号を失う心配なく地面近くを飛行し、予期しない方向から攻撃し、建物内部への侵入すらできていた。 ウクライナの光ファイバードローン・プロジェクトは前進する。もっとも、デモンストレーションと実戦はまた違うものだ。真の問題はこの設計が戦闘でどのように機能するかだった。 ウクライナ入りしてから4カ月後の10月初旬、スマザーズはその答えを知ることになる。