【獣害ルポ】猟師不足の一助に…!アメリカ国籍の男性が日本でハンターになるまでの「波乱万丈人生」
狩猟人口の減少、気候変動による餌不足などにより鹿、猪、熊などの獣害が増加傾向にある日本。獣害に悩む地方自治体は新人猟師の育成に力を入れているが、コロナ禍やウクライナ戦争の影響で火薬、弾薬類の価格が高騰していることもあり、猟師不足が深刻化している。 【写真】ベテランの域に…!獲物を見定めるアメリカ人ハンター この状況下で私は、兵庫県で猟師として生計を立てているひとりのアメリカ人男性に出会った。 ハモール・ジェフリー・ヒースさん(41)はアメリカ、アイオワ州出身。実家はトウモロコシ、大豆などを栽培し、豚や乳牛を育てている酪農家だ。 祖父と父が狩猟をしていた影響で4歳の時に狩猟に興味を持ち、14歳で初めて猟銃を手にし、野山を歩いては鹿や野鳥を狩っていた。ネブラスカ州立大学に在学中に、同大学に留学していた妻の真帆さんと出会い、交際が始まる。 2002年、20歳になった真帆さんが成人式に出席するために一時帰国する事になり、ハモールさんも一緒に日本を訪れた。 「それまでの人生で故郷を出たことがなかったのです。生まれて初めて飛行機に乗り、初めて海を見たのが妻の地元の山口県でした」 その後、3回ほど訪日して日本に興味を持ったハモールさんは在学中に真帆さんと婚約。ネブラスカ大学と静岡大学が姉妹校という縁もあって、日本への留学を決めた。大学を出た後、車を輸出する会社に就職して静岡と東京で16年間、暮らした。 その後、奥さんの転職にともない兵庫県に移住。外国人でも免許を取得すれば狩猟ができることを知ったハモールさんは、猟銃免許と狩猟免許を取得した。 「地元に猟師の知り合いがいなかったので一人で山に入って鹿や猪を獲っていました。『怪しい外国人が鉄砲を持って山を徘徊している』と通報されたこともありました(笑)」 地元の猟友会の西宮支部のメンバーと出会ったハモールさんは、猟友会のベテラン猟師に弟子入りすることになった。日本ではメジャーな「くくり罠猟」(針金やワイヤーなどで作った輪によって、 獲物の足や体をくくって捕らえる仕掛け)は、アメリカでは行われておらず、「非常に興味をそそられた」と言う。 狩猟を始めて7年目となる現在、県や市の鳥獣保護、猟友会の事務局の仕事をして収入を得ており、外資系企業に勤務する妻の真帆さんと小学3年生になる息子の海晴君と3人暮らし。自宅の近所にはハモールさんが昨年5月から借りている田んぼがあり、530kgの米を収穫したそうだ。隣の畑では玉葱やニンニク、キャベツを育てている。自分で育てた作物の味は格別で、お裾分けした友人たちにも好評だという。 「アメリカの家族も基本的に自給自足の生活をしています。自分で食べるものは自分で獲って、自分で育てた方が美味しくて、環境にも優しいです」 ハモールさん一家が暮らす西宮市は六甲山地のなだらかな斜面にあり、住宅地と森林が近接しているため、家庭菜園が獣に荒らされ、猪による事故も多発している。日当たりの良い斜面に設置された太陽光パネルの配線を猪に喰い千切られることが多々あるとという。 獣害の多発を受けて、兵庫県は猟銃と狩猟免許を取得した新人向けに狩猟知識、技術習得が目的の「有害鳥獣捕獲入門講座」を無料で開講している。この講座は狩猟マイスター育成スクールと呼ばれておりハモールさんも受講している。 「このスクールのいいところは知識や技術の習得はもちろんですが、良い仲間ができること。一緒に受講した仲間とはいい関係が続いています」 獣害が深刻化し、若手猟師が不足している都道府県は狩猟マイスター育成スクールを導入してもらいたいものだ。 後編記事『獣との命のやり取りの数々…!兵庫県在住のアメリカ人ハンターの猟に密着』では、ハモールさんの猟の様子に密着した様子を公開する。 撮影・取材・文:横田徹
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