【漫画家に聞く】台湾の風習「後ろを振り返っちゃいけない」1ヶ月って? 現地の暮らしをリアルに描くエッセイ漫画に反響
北枕で寝てはいけない、雷が鳴ったらヘソを隠せ――。このような教えが日本にあるように、さまざまな言い伝えが世界各地にある。そのなかでも天国と地獄の門が両方開くとされる台湾の「鬼月」をトピックにした漫画が『台湾の「後ろを振り返っちゃいけない」1ヶ月が始まりました』だ。 漫画『台湾の「後ろを振り返っちゃいけない」1ヶ月が始まりました』 作者は樋口みみ(@mimiwamama1)さん。台湾人との国際結婚や恋愛のリアルをエッセイで発信する彼女に、本作の制作事情や自身の活動について話を聞いた。(小池直也) ――本作の反響などはいかがですか? 樋口みみ(以下、樋口):面白い、知らなかったなどコメントいただいて嬉しかったです。日本でも似た風習がまだ残っている地域もあるそうで、興味深かったです。 ――本作の着想や制作のきっかけについて教えてください。 樋口:鬼門が開く日が近づいて、台湾人夫含め義家族が「もうすぐ鬼月だから〇〇しちゃダメだよ」と言い始め(笑)。「他にはどんな禁忌事項があるんだろう?」と疑問に思ったのがきっかけです。 夜中に誰もいないリビングで「好兄弟(無縁仏)」について調べようとしたら時に、なぜか突然ネットが断線したことが何よりも怖かったですね……。ただ台湾でも鬼月をここまで厳しく守っているご家庭は少なくなっているとか。 ――国際結婚のリアルをエッセイ漫画にされているのはなぜでしょう? 樋口:最初は、国際結婚や台湾での生活の「楽しい部分」や「明るい部分」だけを描いていました。そして少しずつインスタでフォロワーさんが増え、「国際結婚に憧れる」とか「私も台湾人男性と知り合いたい!」というコメントを多くいただくようになったんです。そこで「何か伝えたかったことと違うぞ……」と違和感を覚えたんです。 そこで、海外移住した際の苦悩や、国際結婚で難しかったこと、などありのままに描いてみようと。不安を抱えながらも漫画にしてみたら、思ったより多くの方が同じよな思いをされていたことを知りました。ひとりでも同じ悩みを持つ方に届けばいいなと願っています。 ――台湾と日本の文化の似ている部分と全く違う部分について教えてください。 樋口:似ているのは風邪を引いたらお風呂に入らない(国によって冷たいシャワーを浴びる土地もある)、調子の悪いときはおかゆを食べる、など特に病気の時の感覚が多い部分で助かりますね。 違う部分は多すぎて一言では言い表せません。特に食事のマナーや迷信、風習慣習ではネタがつきません。例えば日本で「乾杯」というと飲み始める最初にするイメージですが、台湾ではグラスを開ける(一気飲み)を意味するようで、食事の途中途中で何度も何度も「乾杯」があるんです。 口にいっぱいご飯を頬張ってしまったタイミングで相手が「乾杯」という時もあり、グラスをあたふたしながら持つこともありました(笑)。逆に台湾人夫からみると、日本の「箸渡し」や「北枕」も不思議な部分に思うようですよ。 ――作画やキャラデザインについてはいかがでしょう? 樋口:家事育児などで作業時間が限られてしまうので、なるべくシンプルを意識しています。個人的になんとなく重く感じる黒色が苦手で、個人で描くものは主線を全て茶色にして、シリアスな内容でも柔らかい印象になるように意識しています。 ――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか? 樋口:少女漫画雑誌「なかよし」、「りぼん」の作家さんです。幼少期アメリカに住んでいて日本のものが手に入りずらかったのですが、親が「りぼん」だけは定期購読してくれていて、ひたすら読んでいました。吉住渉先生、種村有菜先生、小花美穂先生、藤井みほな先生、故征海美亜先生には特に影響を受けました。 ――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。 樋口:辛さや悩みを持つ方に対して「大丈夫、ひとりじゃないよ」とメッセージを送り続ける作家であり続けたいです。今でこそ増えてきましたが、国際恋愛、国際結婚については周りに気軽に相談できる友人がいない場合も多々あると思います。 悩んだ時、辛いことがあった時に「そういえばこんな漫画があったな……」と思い出してもらえる作品を描いていけたら。その目標までは程遠いですが、日々精進していきます。
小池直也