52期連続黒字、2023年には売上高1912億円、経常利益553億円を叩き出した王者・アパホテル、「客室数日本一」を支える経営哲学とは?
こちらのアプリの開発目的は、ゲストからの内線コールを極力減らすとともに、「かゆいところに手が届く」コンシェルジュのようなサービスをデジタルで実現することにあるそうだ。 2つのアプリから見えてくるのは、「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」、一見相反する両者を、同時に追求するアパの姿勢だ。 アパアプリは、利便性と「忙しいゲストの時間を奪わない」スピード感で、『APA Stay Here』は、デジタルながらも手厚いコンシェルジュのようなサービスで、それぞれに顧客満足度を向上。その裏で、どちらも煩雑な顧客とのやりとりを減らし、従業員の作業を軽減している。
元谷氏は、「日本の人口がどんどん減っていくなか、人員確保は難しくなりつつあり、これからさらに省人化が必要になります。そこで大きな役割を果たすのが、アプリをはじめとするDX化です。アパでは今後もDX化による顧客満足度の向上を推進していきたいですね」と話す。 もう1つ、アパ成功の要因として元谷氏自身が上げるのが、「1ホテル、1イノベーション」の姿勢だ。その意味は、次々に誕生する新しいホテルに必ず1つ以上、改善や新たな機能を付加するというもの。
例えば、2018年3月にオープンした『アパホテル&リゾート〈西新宿五丁目駅タワー〉』では、入眠スピードにこだわってシーリー社と共同開発したオリジナルベッド「クラウドフィット」の快適性はそのままに、厚みを減らした新ベッド「クラウドフィットグラン」を採用。以後、他ホテルへも導入を進めている。 新ベッド開発の理由はインバウンドの多くが持つ、大型トランクが入るベッド下収納を確保するため。コンパクトな客室を、トランクが占拠するのを防ぐ狙いだ。
■「ユニットバスのバスタブを5度傾ける」理由とは? 同様のインバウンド客への配慮で言えば、2023年11月にオープンした『アパホテル〈茅場町八丁堀駅前〉』からは、ユニットバスのバスタブを5度傾けて設置している。「用を足す際にバスタブに膝が当たる」という声を受け、膝が当たらない角度に変更したのだ。 同ホテルではまた、それまで1m60cmあったシャワーホースも1m20cmに改良。短縮することで操作性を上げるとともに、湯を張った際にホースが浸からず、カビを防ぐ狙いだ。