<新たな伝統へ>県岐阜商の挑戦/上 打撃編 体幹鍛え、打球に伸び /岐阜
5年ぶり29回目のセンバツ出場を決めた県岐阜商(岐阜市則武新屋敷)。戦前から高校野球界をけん引し、甲子園で春夏通算87勝と全国有数の記録を持つ。古豪の新たな挑戦に迫る。【横田伸治】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「ナイスボール!」「もう1本!」。活気ある県岐阜商グラウンドの練習風景は、センバツ出場決定後も変わらない。チームの特徴の一つは、入学直後から4番を任され、昨秋の県大会でも3番として打率5割を超えた佐々木泰主将(2年)を中心とする強力打線だ。 昨秋の東海大会では、下位打線でも得点できる切れ目のない攻撃力で強豪校を次々とねじ伏せた。主軸の佐々木主将以外にも、長打力と出塁力を兼ね備えた1番・多和田尚旗選手(同)、東海大会3試合で5安打を放った服部圭吾選手(同)ら、シュアな打撃陣は、フィジカルトレーニングと実戦形式の練習の両面で培われてきた。 目を引くのは、ハードな基礎体力作りだ。3本指での腕立て伏せ100回、腹筋300回に加え、相方に足を持たせて50メートルを両手で歩く手押し車を4方向で各4往復こなす。宇佐美佑典選手(1年)は「手押し車は肩と体幹を鍛えられて、打球も伸びるようになった」と実感を口にする。 1日のスイング数は、2018年3月に鍛治舎巧監督が就任する前の3倍近くとなる1200回に。フリー打撃では、バッティングマシンは本塁から15メートルの距離に置き、打撃投手は12メートルの位置から投げる。日々の練習から速球に目を慣らすことを意識した結果、19年3月には全員が130キロを下回っていたスイングスピードは現在、目標とした140キロを超えた。 実戦感覚を養うため、シート打撃では1死一、三塁、1死満塁、走者なしなど状況を細かく設定。打撃だけでなく、盗塁などを試みることで機動力も鍛える。 さらに、鍛治舎監督が秀岳館(熊本)監督時代から徹底する、追い込まれたら重心を後ろに下げて逆方向を狙うノーステップ打法も武器の一つだ。佐々木主将は「好機に何をすべきか、何をしてはいけないかを日ごろから頭に入れて、試合でも落ち着いて打席に入れる」と効果を話す。 また選手らは年に数回、大手スポーツメーカー「ゼット」が実施する身体能力測定に参加。この測定では全身の筋肉量、パワー、瞬発力、スイングスピードなどの項目について、身体能力を数字で可視化する。 全国で約170校が導入するが、県岐阜商は鍛治舎監督就任時の全国40位台から、昨年末は2位にまで浮上。徹底した反復練習で得た体力、打撃力、戦況判断力が全国大会でも発揮されそうだ。