<インド その6~スピリチュアルなビジネスマン(その1)>-高橋邦典
インドと聞いて、ヨガを連想する人は少なくないだろう。「ヨガの聖地」ともよばれるリシケシや、ヒンドゥー教の聖なる町バラナシには、ヨガを学んだり、スピリチュアルな教えを乞う人々が世界中から訪れる。スワミとかグルとよばれる師匠は無数に存在するが、インドでもっとも人気のあるスワミのひとりが、ババ・ラムデブだ。テレビを通して 、貧富を問わず、子供から老人までができるやさしいヨガを国民に浸透させたヨガ・マスターである。文化や習慣が様々に異なる広大なインドでも、ラムデブの名前なら誰もがみな知っているほどのセレブリティーだ。
あるメディアの仕事で、ラムデブの撮影を依頼されたことがあった。彼の拠点であるハリドワールに出向くが、秘書がトンチンカンな輩でなかなかラムデブに会うことができない。日が暮れる頃になってようやく、 半ば強引に訪問者たちの列に紛れ込み、面会を果たすことができた。椅子に腰掛け人々の話を聞く彼の写真を撮る僕を見て、ラムデブはこういった。 「こんな写真ではつまらないだろう。明日の朝ヨガのセッションをするから、4時半に体育館に来なさい」 自分のイメージが気になるのか、それともわざわざ出向いてきた外国人への思いやりか、いずれにしてもこちらとしてはありがたい。翌朝眠い目をこすりながらも、ヨガを教える彼の姿を写真に収めることができた。さすがセレブリティー師匠、メディアの扱い方はよく心得ている。 (2016年2月撮影)