大山悠輔「阪神残留」を決定づけた「裏方さん」とのきずな…“打撃開眼”までの猛練習を支えた影のキーマンとは
スタッフや裏方への思い
確かに、残留決定の記者会見で、大山はこう語っている。 「ファン感謝デーの時にスタンドに多くの僕の赤いタオルを広げてもらって、すごく嬉しかった。そのタオルをもっともっと増やしたいなと率直に思った」 前出の記者によると、ファンへの思いももちろんだが、「残留の一番の決め手は何か」という問いに対して、大山がこう述べた部分が気になるという。 「いやもう、一番が多すぎて本当にいっぱいあるんですけど、まずはやっぱり監督、コーチ、スタッフの皆さん、裏方の皆さん、あとはチームメイト。もう一回、優勝、日本一を達成したい。その気持ちは凄くありますし、そこが理由になりました」 この発言にある「裏方さん」の中に、打撃投手がいるそうだ。 「一人ではなく、何人かいるようです。彼らから『残ってほしい』とか、『今までご苦労様。どこのチームに行っても応援しているから』と言われて、大山の胸中に様々な思いが去来したそうです。特に2020~22年ころの 思い出が蘇ってきたそうです」(前出・在阪記者) 当時の大山は、新井良太打撃コーチ(41=現広島二軍コーチ)の指導のもと、打撃フォームの改善に取り組んでいた。 「広島の新井貴浩監督(47)の実弟でもある新井コーチは、2018年から22年まで阪神コーチを務め、大山にも熱心に指導しました。大山の打撃結果が良ければ“それは彼の力。ダメだったら僕の責任”と公言していました。大山はバッドのヘッドを投手寄りに変えた20年から打撃開眼し、トラの主砲に。同コーチとの猛練習にずっと付き合ってくれた打撃投手たちからも、猫背になるクセを指摘され、上向きになるようにフォームを変えた。そうした苦労を共にした打撃投手の言葉に、大山もぐっとくるものがあったのではないでしょうか」(同)
またも大型FAで敗れた巨人
ところで、阪神の慰留条件を上回る条件を提示した巨人だが、他球団はこんな反応を見せていた。 「巨人が長期契約を提示してきたところに“本気度”を感じました。今回、大山に提示された5年プラス延長1年というのが本当なら、今オフのFA補強に本腰を入れているんだと思います」(在京球団スタッフ) 長期契約、契約年数の長さこそ、巨人としての“誠意”ということか。たしかに、過去に巨人が4年や5年といった長期年数を提示して獲得したFA選手は大物ばかりだ。 94年の広沢克己(62・5年)を始め、96年・清原和博(57・5年)、99年・江藤智(54・4年)、06年・小笠原道大(51・4年)、11年・杉内俊哉(44・4年)、16年・陽岱鋼(37・5年)、18年・丸佳浩(35・5年)、20年・梶谷隆幸(36・4年)がそうだ。 しかし、近年の巨人はFA交渉で敗れるケースも増えている。昨年オフ、オリックスからFA宣言した山崎福也に4年総額8億円強を提示し、日本ハムに敗れている。それを上回る「5年」を提示し、さらに1年の延長オプションをつけたということは、巨人は「本気で獲りに来た」と他球団は解釈していたが、今回も惨敗。 阿部監督は「やることをやってチャレンジした。本人の意向だろうしね」と述べたが、大山本人から連絡を受けたことを明かし「また敵同士だけど巨人阪神を盛り上げて、野球界を盛り上げていきましょう」と伝えたという。 実現していたら巨人と阪神という、伝統球団間で初のFA移籍となるところだったが、今回は幻に終わった。来季、阪神は球団創設90周年のメモリアルを迎える。「伝統の一戦」がさらなる盛り上がりを見せるのか、注目だ。
デイリー新潮編集部
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