化粧品の受託製造企業、下期増収65% 国内販売が回復
コロナ収束に伴い、国内の化粧品販売金額が回復基調にある中、今回本紙が化粧品受託製造企業を対象に実施した調査(有効回答118社)では、今年下期に増収を達成した受託企業は、昨年調査より13.4ポイント増の65%に達した。設備投資を行う受託企業も増加し、生産現場に活気が戻りつつある。ただ、製造コストの上昇が続いており、利益を圧迫する構図には変わりなく、2ケタ増収を達成した企業は減少した。下期の人気受注成分はナイアシンアミドが2年連続でトップ、アイテムは今年もヘアケアがトップとなった。ASEANを中心に海外輸出案件も回復基調にある中、2025年上期は6割の受託製造企業が増収を見込む。 ■生産量が拡大 本紙編集部では、11月中旬~12月上旬に化粧品受託製造企業約200社を対象に、取材およびアンケート調査を実施。118社より回答を得た。 24年下期の経営状況について、「良かった」と回答した企業は、昨年調査より1ポイント減の34.7%、「悪かった」は同5.9ポイント減3.4%、「どちらとも言えない」は同1.8ポイント増の56.8%となった。増収企業は、昨年調査より13.4ポイント増の65.0%となった。 コロナ収束を受け、国内の化粧品販売市場は回復基調にある。経済産業省の生産動態統計によると、今年第3四半期(1~9月分)の化粧品販売金額は、前年同期比7.9%増の1兆268億4810万円と順調に推移している。 受託製造市場でも生産量は増加。生産量の拡大を受け、設備投資状況も回復している。今年下期に設備投資を行った企業は、昨年調査より9ポイント増の49.6%。新工場の建設は6社が行った。 一方、受託製造企業にとっては、2024年も引き続き、円安に伴う原料や資材、エネルギーコスト、人材補強のための人件費などを含む製造コストの高騰が続く中、売上は伸びても利益が圧迫される事態が続いている。変動費に対する取引先への価格転嫁は進んでいるものの、固定費までは交渉できない企業も少なくないもようだ。今回の取材・調査でも、多くの企業から利益圧迫に対する悩みが多く聞かれた。 ■人気受注成分、「ナイアシンアミド」2冠 今年下期の人気受注成分を複数回答で聞いた調査では、2年連続でナイアシンアミドがトップに。昨今のビタミンC人気を受け、ビタミンC(VC誘導体含む)が2位だった。3位は昨年2位の幹細胞培養液(ヒト・植物含む)となった。 今年下期の人気受注アイテム(複数回答)は、約70品目の記述が見られ、アイテムの細分化がうかがえた。トップは昨年調査と同じくヘアケア製品だった。次いで美容液、クリーム(ジェル・バーム含む)、化粧水と、上位は昨年と同じ結果に。ヘアケア分野では、依然として中高価格帯のシャンプー・トリートメントが堅調を維持している。今回の調査では、カラーシャンプーやカラートリートメントなどの染毛系、ヘアバームやヘアグリスなど、スタイリング系の回答も複数見られた。 剤型では近年、バーム製品の人気が高い。昨年来、溶融充填設備を導入する受託企業も増えている。その他では、スペシャルケアアイテムとして、フェイスシートの人気も高まっていることがうかがえた。 ■25年上期、6割が増収見込む 2025年上期の経営見通しについては、「良くなる」との回答は、昨年調査より5.2ポイント減の39.8%、「悪くなる」は同0.2ポイント減の3.4%。半数以上が「どちらともいえない」と回答している。2025年上期に増収を見込む企業は、同3.7ポイント減の60.8%となっている。 「良くなる」と回答した企業からは、「既存顧客の販売量回復」「新規顧客から新製品が上市される」「海外輸出案件が伸びる」などのコメントが聞かれた。「悪くなる」「どちらともいえない」と回答した企業からは、「製造コストの上昇が利益を圧迫する」との声が多く聞かれた。 なかには「大手企業に仕事が集約され、企業間の格差が拡大する」「業績の二極化がみられる」などのコメントも。実際、2024年も複数の受託製造企業が身売りや廃業・倒産したというニュースが聞かれるなど、化粧品受託業界での競争が激化していることがうかがえる。 一方で、ニッチなアイテムで売上を伸ばす企業、ASEANを中心に海外輸出案件が伸びている企業、OEM製品がヒットした企業なども少なくなかった。円安下で製造コストの上昇は、2025年上期も続く見通しだが、来年上期に設備投資を予定している企業は、同9.7ポイント増の57.9%。「新工場建設」は8社が計画していることから、来年上期も化粧品の生産量は伸びることが予想される。