茂木健一郎「心が整理されてポジティブな気持ちになる」日常生活での行動とは?
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 6月8日(土)の配信では「ネガティブ思考」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
私は些細なことで自分を責めてしまうことがあります。どうすればその思考を変えられるでしょうか? アドバイスをいただけたら嬉しいです。
<茂木の回答>
茂木:些細なことでご自身を責めてしまうのは、実はよくあることです。脳科学は非常に深く心理学と結びついているのですが、いわゆる「ポジティブ心理学」とお聞きになったことはありますでしょうか。どうやったら前向きに気持ちを高めていけるかを研究する心理学です。 ポジティブな気持ちはネガティブな気持ちと無関係ではなく、ネガティブな気持ちがあるからこそポジティブな気持ちも生まれてくるのだ、といったことをポジティブ心理学の研究者たちは言っています。 具体的にどういうことかといいますと、おでこのほうの領域である、脳の前頭葉が「再解釈」といって、自分の経験、性格や行動などの解釈を変えます。たとえば、失敗して落ち込む場合、解釈を変えて「失敗したからこそ学べることがあった」というふうに切り替えることもできますよね。 些細なことで言いますと、相手の何かしらの言葉で傷ついてしまった、といったことがあったとします。そうすると、「そんなことを相手に言わせたのは自分のせいだ」みたいに思ってしまう方もいらっしゃると思います。 ですが、再解釈すると、その言葉の何かが自分に響いたということですから、そういった心ない言葉で、自分自身の大切なことがわかったと考えることもできる。そういう意味においては、相手に対して感謝の気持ちを持つこともできると思います。 ポジティブ心理学では、ネガティブな心の働きを脳が再解釈することでポジティブになる。もっと言うと、ネガティブな気持ちが強い人ほどうまく再解釈すればポジティブな気持ちも強くなるということが、研究でわかっています。一般的な言葉で言うと「気分を切り替える」ということですね。 私の場合はずっとランニングをしているのですが、先ほど申し上げた前頭葉の再解釈が意外と起こったりします。それから、ウォーキングもおすすめです。僕も稀に落ち込むことがあるのですが、ある程度の距離をウォーキングすると心が整理されてポジティブな気持ちになることがよくあります。 些細なことで自分を責め続けてしまうのはよくないことだと、相談者さんはもうわかっていらっしゃいますよね。ネガティブな気持ちがあればあるほど、うまく切り替えればポジティブな気持ちになれますので、あまり自分を責めないでくださいね。 相談者さんの考え方、気持ちのなかにもいいことへのきっかけがあると解釈し直せば、ポジティブになれると思います。ぜひ、この放送をきっかけに切り替えていただけたら嬉しいです。 (TOKYO FM「茂木健一郎のポジティブ脳教室」2024年6月8日(土)配信より)