「学歴フィルター」は都市伝説? 就活生が語る「体験談」
「自己暗示」にかかる場合も
一方で、「学歴フィルターを設けていない企業も少なくない」と常見准教授は言います。 「近年は多様性を重視する傾向があるし、『さまざまな大学のトップ層の学生を集めたい』と言っている企業もあります。実際、エントリーの段階で大学名の記入欄をなくした大企業もあります。ところが、『いざふたを開けてみたら、応募してくるのは偏差値が高めの大学ばかり』という人事担当者の話も耳にしました。さまざまな大学から多様な人材を採用したくても、応募者が少ない大学からは求める人材が見つからないことも多く、結果として採用につながらないのです」 なぜ学歴フィルターをかけていない企業にも、限られた大学からの応募しかないのでしょうか。 「まず、情報が少ないということです。就職情報サービスからのメルマガを送るのも、大学名で分けている傾向があります。有名大学の学生には商社や銀行、大手メーカーの案内が届く一方で、そうでない大学の学生にはサービス業や飲食業、福祉系の企業の案内が届く、という具合です」 さらに「前例がない」という現実もあるようです。 「大学によっては、サークルの先輩やゼミの先輩に大手メーカーや商社に就職した人がいない、信用金庫に勤める先輩はいてもメガバンクはほぼゼロ、ということもあります。そうなると学生が『どうせ学歴フィルターで落とされる』と勝手に考えて、エントリーさえしないことも多いのです。『自分には無理』という自己暗示にかかってしまうのですね」 つまり、学生の側にも学歴フィルターの思い込みがあるということです。それを乗り越えるにはどうすればいいのでしょう。 「まずは受けることです。エントリー段階での学歴フィルターがあるかどうかは、エントリーしてみないとわかりません。会社説明会に参加するところまでたどり着ければ、次の可能性が見えてきます」 あるのか、ないのか。あるとしてもどこに使われているのか、学生にはよくわからないのが学歴フィルターです。であれば、少しでも偏差値の高い大学を目指したほうが安心と考えがちですが、常見准教授は「その考えは安易です」と言います。 「受験エリートが必ずしも企業エリートになれるわけではない、ということに気づいている企業は多いです。大学名で学歴フィルターを1つ越えたとしても、その先の関門を越えられるかはわかりません。それよりは4年間で学生がどれだけ成長できるか、どんなことを学べるのか、そうしたことをしっかり考えて学生をサポートしてくれる大学を選ぶほうが、有利であるとも言えるのです」
プロフィール
常見陽平(つねみ・ようへい)/千葉商科大学国際教養学部准教授、働き方評論家。1974年生まれ、北海道札幌市出身。一橋大学卒業後、リクルートに入社。バンダイに転職後、2010年に『くたばれ!就職氷河期 就活格差を乗り越えろ』で注目を集める。38歳で一橋大学大学院社会学研究科修士課程に入学し、14年に修了。フリーランスなどを経て現職。
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