能登伝統「キリコ祭り」、開催危ぶまれたが…みこし制作者「祭りは魂や」
巨大な灯籠が巡行する石川県能登地方の伝統文化「キリコ祭り」が、5、6日に開催される能登町宇出津(うしつ)地区の「あばれ祭」を先頭に各地で行われる。能登半島地震の被災地で中止を余儀なくされた祭りもある中、あばれ祭は、参加団体を減らして準備を整えた。人口減少が進む地域で、住民たちは祭りの継続が復興に直結するとして、知恵を絞っている。 【写真】被害を免れたキリコを見つめる諸角さん(3月)
キリコは住民が担いで練り歩く巨大な灯籠。県によると、県内では主要な29の祭りを含む大小約200のキリコ祭りがある。被災状況などによって開催の判断は分かれる。
七尾市の漁師町で行われる石崎(いっさき)奉燈(ほうとう)祭は、倒壊家屋の撤去状況などを理由に、キリコの巡行範囲を狭めて実施する。輪島市の名舟大祭は、会場となる広場の損傷もあり、神事のみにする予定だ。
一方、津波で甚大な被害を受けた珠洲市宝立地区の「宝立七夕キリコ祭り」は中止が決まった。津波でキリコ5基が流された上、担ぎ手となる若者の多くが地区外に避難しているのが理由という。
実行委員長の越後英明さん(63)は「来年以降は開催できるよう、関係者と話し合いたい」と話す。
県は地域の再建や復興につなげようと、被災地域の祭りの準備経費や開催経費などを3年間で最大150万円助成することを決めた。
馳浩知事は「祭りは能登の人たちにとって特別な行事。再開は復興の鍵を握る」と強調する。
例年約4万人が集まる能登を代表する祭りとして知られるあばれ祭は、3月下旬に開催が決まった。宇出津祭礼委員会によると、液状化や道路の亀裂などが激しく、避難者も多かったが、「今年もやらなければ、来年以降の開催も危ぶまれる」と判断した。
祭りは、高さ約6メートルの灯籠キリコが巡行し、夜には巨大なたいまつの火の粉を浴びながら練り歩く。みこしを道路にたたきつけたり、川に投げ込んだりという豪快な行事だ。みこしの壊れ方が激しいほど盛り上がった証しだといい、祭りの名の由来にもなっている。