いつもの暮らしを自然に中へ──ワンダラウトが目指すキャンプスタイル
オリジナルアイテムや世界中から厳選された アウトドアギアをキュレートする、wanderout(ワンラダウト)。 クリエイティブ・ディレクターの乙幡浩史に 自然にも自分にも負荷をかけない キャンプスタイルを長野県南佐久郡にあるキャンプ場、ist-Aokinodaira Fieldで教えてもらった。 【写真を見る】限りあるアイテムで快適に過ごす新しいキャンプスタイルとは
ミニマルであることが、自然と都会の生活を繋げる
2020年にアート・ディレクターのムラカミカイエらとともに立ち上げたプロジェクト、「wander out」。ギアの製作や別注など、スタイリッシュなアウトドアアイテムをキュレーションしており、そのクリエイティブ・ディレクターを務めるのが乙幡浩史だ。「現代の人々が幸せに生きるためには、発展することを目的とした社会から、自然が中心となるような社会への再構築が必要だと思っています。そんな新しい暮らし方へ移行するための実験室として、wanderoutはスタートしました」(乙幡浩史、以下同) ■やみくもに買い足すのではなくルールを決める ここ10年ほどキャンプ市場は成長を続けているが、今では供給過多の状態に。本当に必要なものを見極めることが今、重要になっている。「最小限のアイテムで少しの不便を楽しむ。(インダストリアルデザイナーの)ディーター・ラムスの哲学『Less but better』のようなキャンプスタイルが理想ですね。最初に容量を決め、自宅でもキャンプでも同じ道具を使うことで、持ち物を減らすことができます」 例えば、愛車に積めないもの、30Lのコンテナ2つに収納しきれないものは持たないとルールを決めているそう。「オートキャンプでは、登山のように超ハイスペックなアイテムは必要ありません。wanderoutでは、まず家で使って違和感がないこと、次に外でも使えるスペックであること、という順序でプロダクトをデザインします。また、ロゴを控えめにしている点も、自宅にも自然にも馴染むポイントですね」 ■デザインが良ければ物を減らすことができる 確かに、コーヒーメーカーや器など、シンプルで汎用性の高いデザインであれば、自宅でもキャンプでも使えるため持ち物が減り、最終的には環境負荷を減らすことにも繋がる。また、セレクトショップでもあるwanderoutは、数多あるキャンプグッズから、本当に使いやすくて必要なものだけを厳選しているという。「なんでも揃うのではなく、セレクトショップの原点に立ち戻って、アイテムをきちんと選び抜くことが改めて大切だと思っています」 ■作り手のセンスを感じるキャンプ場 今回訪れた「ist - Aokinodaira Field」はラグジュアリー過ぎず質素過ぎず、ちょうどよいバランスのキャンプ場だ。テントサイトの周囲には、床暖房が完備されたスタイリッシュなキャビンや朝食をいただけるラウンジがあり、初心者でも難なくキャンプを楽しむことができる。「キャビンは必要最低限のスペックを備えていて、窓の切り取り方や配置に心地よいセンスと作り手の思いを感じるキャンプ場だと思います。“普段の暮らしを自然の中で”というコンセプトも、wanderoutと通じるものがある。初心者も十分に楽しめるので、ここでの体験が二拠点生活や移住の想像を膨らませるきっかけとなったり、夢を持ち帰ることができる。それこそが一番のリトリートかもしれないですね」 ■「ist - Aokinodaira Field」/都内から車で約2時間半。川や池、丘など表情豊かな自然が広がり、使い勝手とセンスの良さを感じるキャンプ場。 長野県南佐久郡川上村樋澤1402 ☎070-4024-1135 https://ist-field.com/aokinodaira/ ■乙幡浩史/サザビーリーグでla kaguなどの立ち上げに携わった後、独立。wanderoutを立ち上げ、代表取締役兼クリエイティブ・ディレクターを務める。祖父や父の影響で、幼少期よりキャンプとともに、フライフィッシングも嗜む。 写真・加藤純平 編集と文・ 遠藤加奈