【視点】民主主義国家の連携で平和守れ
日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)、日本、米国、豪州、インドの枠組み「クワッド」の外相会合が相次いで東京で開かれた。2プラス2の共同発表では、尖閣諸島(石垣市)に対する日本の平穏な施政を損なおうとする中国の「力または威圧による一方的な現状変更の試み」に言及。強い反対の意を表明した。尖閣諸島に日米安保条約が適用され、この地域が日米の防衛範囲であることも改めて確認した。 クワッド外相会合の共同声明でも、東シナ海、南シナ海での状況に対する深刻な懸念が盛り込まれた。 尖閣周辺海域では今月までに、中国海警局の艦船が過去最長となる215日連続で航行し、領海侵入や日本漁船への威嚇を繰り返している。中国の振る舞いがこれ以上エスカレートするのを防ぐためにも、国際社会が連帯の意を示したのは意義深い。 尖閣情勢を巡り、八重山住民が最も懸念するのは、中国艦船が他国の漁船や巡視船を体当たりや放水などで公然と攻撃する南シナ海のような状況が再現されることだ。 尖閣周辺の「南シナ海化」が防がれているのは、第一に領海警備にあたる海保の奮闘であり、そして海保の後ろに控える自衛隊、さらには日米同盟の存在が大きい。 弱者を力づくで排除し、実力行使で「領海」を広げる。そうした中国のやり方を、日本は南シナ海で何度も見てきた。日本に十分な備えがなければ、周辺で操業する八重山住民の身辺にも危害が及んでいた可能性がある。 しかも中国政府は「領海」内で外国人を拘束する手続きを整備し、艦船の武装を強化するなど、今後とも実力行使で尖閣を奪おうとする構えを崩していない。日中の国力に大きな差がついてしまった現在では、国際社会の連帯なくして沖縄県民や八重山住民の安全を守ることはできない。 2プラス2の共同発表では沖縄での米兵による性的暴行事件を受け、事件・事故に関する適時の情報共有を確認した。「同盟協力の精神に基づき、容認することのできない事件や行為を防ぐ」ため、在日米軍の取り組みを前向きに評価した。 米軍は軍幹部、県、地域住民による「フォーラム」を創設する方針を示している。実効性ある取り組みがなされるのか、注視する必要がある。 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設推進が明記されたことは、同飛行場の早期返還を実現する上で重要だ。今後は宜野湾市の跡地利用を本格的に議論する段階に入る。そのためにも、移設作業を停滞させるべきではない。 日本が陸海空自衛隊を一体的に指揮する「自衛隊統合作戦司令部」に対する米側のカウンターパートとして、在日米軍司令部を「統合軍司令部」として再構成する方針も示した。南西諸島で同盟活動を強化することも明記した。現在行われている日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」もその一環だ。 尖閣諸島を抱え、台湾に近いという地理的条件を考えれば、沖縄、さらには八重山の島々の重要性は増すばかりである。日米両政府は、訓練、施設整備、装備強化が住民の過度な負担にならないよう配慮しなくてはならない。 同時に日米を軸とする民主主義国家が、力を誇示する独裁国家に対し、平和を守る強い決意を示すことが望まれる。