「隣人がまだ」祈りと憂い 輪島火災、雨中の捜索
安否が分からない隣人を思い、祈りながら見守った。「早く見つかって」「言葉にならない」。長年親しまれてきた石川県輪島市の観光地「輪島朝市」の火災現場で県警などが9日、雨の中で大規模な捜索を実施。住民からは、知人の安否や先行きを憂う声が上がった。 午後1時過ぎ、十数人のグループに分かれた捜索隊員が、焼け落ちたがれきに慎重に踏み込んだ。厚い雲が垂れ込み、時折雨が強まる中、スコップで丁寧に土を掘り起こした。 所々に雪が残る焼け跡に、花が手向けられた場所も。自宅が全焼した西田晴美さん(85)は、近所の夫婦らと火災後に連絡が取れていない。自身も逃げるのに必死で何一つ取り出すことはできなかった。「ただ涙が流れるだけ。火事を恨みます」と声を落とした。 別の80代女性は、知人を案じながら捜索を見つめた。「いつも礼儀正しくて誰でも褒める人だった」。午後2時半ごろ、周囲の視線を遮るようにブルーシートが張られた。不明者の遺体をのせたとみられる車が出発すると、そっと手を合わせ、頭を下げた。