センバツ高校野球 中央学院・手倉森蕾音投手 「てぐ」スタンドで全力 肩故障し「応援団長」 /千葉
第96回選抜高校野球大会に出場している中央学院の右腕、手倉森蕾音(てぐらもりれお)投手(3年)の今大会の活躍の場はマウンドではなくスタンドだ。けがの影響などでメンバー入りを逃したが、心機一転チームの力になろうと奮闘する。【林帆南】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「応援団長をやってもらうから。よろしく」 センバツの壮行会前日の2月16日、野球部顧問の中野翼教諭(34)から突然そう告げられた。前日のメンバー発表では、肩のけがの影響がありベンチ入りを逃した。悔しかったが、夏に頑張ろうと気持ちを切り替えていたところだった。 投手を始めたのは軟式野球部に所属していた中学2年の夏。それまでは外野手だったが、当時の監督が投手を募ると、迷わず手を挙げた。小学6年の頃に練習試合で投手を務めたことがあり、相手打者を抑えたことがうれしくて、ひそかに「ずっとやりたいと思っていた」。カーブやスライダーの変化球を習得しており、自主性を重視した練習が自分には合うので、レベルアップにつながるのでは――と中央学院を選んだ。 入学後は走り込みや投球フォームの修正などに取り組み、球速は約20キロも上がった。だが肩の痛みは昨秋から続いていた。新チームとなって背番号「11」を背負った県大会では「メンバーから外れたくない」と我慢しながら練習を続けたが、一向に改善しなかった。遠投もできなくなり、関東大会はベンチを外れた。 仲間からは「早く治して(センバツが決まった時に)間に合わせろよ」と励まされた。「復帰した時に体力が落ちていてはいけない」と前向きにトレーニングに打ち込んだ。昨年12月下旬からリハビリの一環でキャッチボールも始めた。 2月上旬、久しぶりに紅白戦でマウンドに立った。チームはセンバツ出場が決まり、ベンチ入りメンバー決定まで残りわずかとなっていた。「お前の全部、出し切れよ」。中村研心主将(3年)が声を掛けてくれた。肩はまだ完治していなかったが、ベンチ入りしたい一心で3イニングをだましだまし投げたが、とても試合で通用する内容ではなかった。「全然だめだ」 センバツの舞台に立つことはかなわなかった。だが指導陣から、故障に苦しむ中でもできることを探して努力する姿勢を評価されて「応援団長」に選ばれ、昨秋の関東大会のスタンドで目にした応援を思い出すと、前向きな気持ちになれたという。 引退した1学年上の先輩たちが中心となり、スタンドからチームの応援曲「シダックスファイヤー」などで盛り上げてくれた。「これだけ応援されることはすごいこと。ベンチもスタンドも盛り上がって一体感があった」と感謝の念も思い出した。 20日の耐久(和歌山)との1回戦では、甲子園のアルプス席に、ユニホーム姿で最前列に立って声を張り上げる手倉森投手の姿があった。なかなか2点目が取れなかった場面では、シダックスファイヤーの一節「中央学院、燃えろ」の言葉に気持ちが入った。恥ずかしがり屋で、実は人前に出るのが得意なタイプではない。だが、応援にはそんなことは関係ない。「応援は自分の役目。全員で勝ちにいきたい」。自らを鼓舞しながら試合を見守った。 中村主将は千葉市の自宅が近所で、中央学院への進学が決まってからは一緒に練習してきた仲だ。「明るい性格でみんなを笑顔にし、好かれる。メンバーに入ってほしい気持ちがあったが、今回は応援でチームを元気にしてくれる。俺たちには『てぐ』しかいない」と言い切った。