【ブラック・ジャック】マンガの神様とアニメの鬼才が描いた世界
マンガの神様「手塚治虫:てづかおさむ」とアニメの鬼才「出崎統:でざきおさむ」という、因縁深い「ふたりのおさむ」が邂逅した『ブラック・ジャック』にスポットをあてた一冊『ふたりのブラック・ジャック マンガ&アニメ絵コンテ・競演集』が復刊ドットコムから刊行される。 【関連画像】『ブラック・ジャック』の絵コンテや原稿など貴重な資料を見る(8枚) 日本初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』を制作し、今日の世界的なアニメ人気を導いた手塚治虫と虫プロダクション。 そのスタジオからは多くの才能が排出され、その後のアニメ界の発展に寄与した。 『機動戦士ガンダム』の富野由悠季・安彦良和、『タッチ』『銀河鉄道の夜』の杉井ギサブロー、『宇宙戦艦ヤマト』の山本暎一、『銀河鉄道999』『幻魔大戦』のりんたろう。そして、『あしたのジョー』『エースをねらえ!』『ガンバの冒険』『宝島』と、テレビアニメの隆盛を築いた作品群を監督した出崎統だ。虫プロ在籍時には『あしたのジョー』という、手塚原作外で頭角を現した出崎統が、手塚治虫の死後になって初めて手掛けた手塚原作のアニメ化が『OVA ブラック・ジャック』だった。 『ブラック・ジャック』連載開始50周年記念の一環として刊行される本書は、手塚治虫が描いた原作マンガと、出崎統が手がけたアニメーション、両サイドの資料を合体させた書籍となる。 アニメサイドでは、『OVA ブラック・ジャック』からBJ最大のライバルであるドクター・キリコが登場する「カルテIV 拒食、ふたりの黒い医者」の絵コンテ全編に、さまざまな設定画や資料を収録している。 そしてマンガサイドからは、やはりドクター・キリコが登場する「恐怖菌(原題:死に神の化身)」を、鉛筆線などを活かした“生原稿バージョン”で収録。アニメと同題の「ふたりの黒い医者」全編にドクター・キリコ登場回のすべてが紹介されている。 加えて企画ページとして、虫プロ時代からの手塚・出崎を知る丸山正雄プロデューサーや杉井ギサブロー監督、そして出崎統の名パートナーだったアニメーターの杉野昭夫氏といった関係者の新規インタビュー記事や、手塚&出崎の生前の発言もふんだんに収集し、ふたりの天才クリエイターの個性を、立体的に読み解いていける一冊となっている。 手塚治虫率いる虫プロが、日本最初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』で採用した独自の「リミテッドアニメーション」というスタイル――。その制約のなかで数々の技法を開発し、日本アニメの質を向上させた、出崎統。「東映動画=宮崎駿」の流れとは真逆のアプローチともいわれる「映像演出」の極限を目指した彼は、手塚治虫の「虫プロ」が生んだアニメ演出家の最高峰といえるかもしれない。 出崎は自作の絵コンテを自身で描くことで知られていたが、その評価はアニメ業界では高かったものの、まとまった形で書籍化されるのは今回が初めて。本書『ふたりのブラック・ジャック』を通して、国産アニメーションが積み上げてきた表現の歴史に触れることができる資料集だ。 また、手塚プロダクション公式YouTubeでは現在、出崎監督による『OVA ブラック・ジャック』から「カルテIV 拒食、ふたりの黒い医者」や、出崎演出の紹介を期間限定で公開している。
アニメージュプラス 編集部