4月4日から万物が生き生きしてくる「清明」。フィールドアドバイザーがこの時期の<野草の楽しみ方>を伝授!「『ウドの大木』もちゃんと役に立つことがある」
◆野草の楽しみ方 初候 玄鳥至る 野蒜*ノビル 筆者が幼少年期を過ごした時代は、身近な草花や木の実などが子どもたちの手ごろな「おやつ」であり「おもちゃ」でもあった。 ノビルもそれのひとつで、学校帰りの道すがらに見つけると、鱗茎(りんけい)を掘って齧(かじ)ったり、ときには3歳下の妹に「おくるみ人形」などを作ってやったものである。 ノビルは『古事記』にも登場する日本古来の食草で、今日でも生の鱗茎に味噌をつけたりして食されているが、子どものころのアソビゴコロを思い出して「おくるみ人形」の「おくるみ」に大葉(シソの葉)を使ってノビルを巻けば、ちょっとタノシイ酒の肴に変身する。 ノビルとアサツキはよく似るが、前者は鱗茎が球形、後者のそれはラッキョウ形だ。 次候 鴻雁北へ帰る 薇*ゼンマイ ゼンマイは、山菜料理で最も多用されるひとつだが、アクが強く、食べるのに手間がかかるため、そのほとんどが乾燥させた「干しゼンマイ」として使われる。 それならば、「食べる」のではなく、ゼンマイの若苗が被っている薄茶色の綿毛を楽しんでみてはどうだろうか。 そのひとつが、秋田地方に伝わる「ぜんまい織り」で、この綿毛が防水性にすぐれているところから昔は「雨合羽」の生地に用いた。 そして、もうひとつは、ゼンマイの綿毛は羽化したばかりのカゲロウの胴体の色に似ているとして、ヤマメやイワナなどを釣るための毛鉤に使われており、これを「ゼンマイ胴の毛鉤」と呼ぶ。 ゼンマイは多年性のシダ植物で全国に分布。
◆末候 虹始めて見る 独活*ウド 栽培される軟白ウドに対して、野生のものを「山ウド」と呼ぶ。 山ウドは、すぐれた香気と歯ざわりが持ち味の山菜として知られるほか、古くから風邪や中風などの薬草としても知られる。 その誇り高い山ウドだが、一方で、「ものの役に立たない見掛け倒し」のたとえとして「ウドの大木」と言われることがある。 けれども、その「ウドの大木」もちゃんと役に立つことがあるのである。 それは、ウドの新芽は必ず前年の枯れた茎(大木の残骸)の脇から出てくるため、山菜採りでウドを探すときは、遠くからでもよく目立つその「ウドの大木」を目印にするのがカシコイ方法ということだ。 どんな物も、何かの役に立つという好例。 ※本稿は、『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
大海淳