山中慎介が「頭ひとつ抜けている」と語るバンタム級の日本人王者は? 井上尚弥との対戦が実現したら「極上のカード」
――今後の防衛戦や統一戦に向けて、武居選手はどんなスキルが必要になりますか? 「経験を積むことが一番ですが、あとは細かいパンチを身につけることですかね。それによってパンチのメリハリや強弱をつけて、武居の武器であるワイルドで軌道の読めないパンチを入れていければ、よりよくなるのかなと。ただ、あまり細かいパンチの技術を求めすぎると、武居のボクシングが変わってしまう可能性もある。その調整については、八重樫くん(=八重樫東トレーナー)と決めていってほしいです」 ――最終12ラウンドはペースが落ちて被弾も多くなりました。あのピンチの場面はいかがでしたか? 「ラウンドの途中でいきなりスタミナ切れを起こしたというか、突然ガクッとペースダウンしましたね。あと1、2発もらっていたらレフェリーが止めていたかもしれません。本当にギリギリのタイミングでした。あれほどピンチになった経験はこれまでなかったでしょう。そんな場面の対応、ロープ際での対応なども今後の課題です」 ――各ラウンドのポイントはどう見ていましたか? 「後半はマロニーが強引に出てきて、ポイントを取られたラウンドもいくつかあったとは思いますが、11ラウンドまでは試合運びに問題はなかったです。武居は左ボディーで効果的にダメージを与え、ポイントも取れていたと思います。序盤には、減点も取られましたが」 ――2ラウンドにローブローを取られましたね。 「減点を取られるほどではない感じに見えましたけどね。そもそも、マロニーのベルトラインが太くて、ハイウエスト気味だった。あれだと、ボディーで打つ場所がないですよ(笑)。ただ、武居はその減点も気にせず、そのあともしっかりとボディーを打ったのがよかった。左ボディーが出なくなると、マロニーはもっと前に出てきたでしょうから」
【バンタム級"ネクストモンスター"の武器】 ――かつて、井上尚弥選手が束ねていたバンタム級の4本のベルトを、日本人選手がひとつずつ保持することになりました(※)。山中さんから見た、それぞれの評価はいかがですか? (※)WBA:井上拓真、WBC:中谷潤人、WBO:武居由樹、IBF:西田凌佑 「このなかでは、中谷が抜けていると思います。もちろん拓真も総合的にレベルは高いし、西田も大森翔平や比嘉大吾といった実力者をしっかり倒すなど確かな力がある。西田はベルトを獲ったばかり(5月4日)ですが、それによって自信も深まり、攻略しにくいチャンピオンになるでしょう。ただ、これまでの勝ち方や戦いぶりを見ると、やはり中谷が頭ひとつ抜けていると思います」 ――中谷選手が階級を上げて、ライバル不在の尚弥選手との対戦を望む声も出ています。 「尚弥の対戦相手として考えるなら、最も楽しみな選手です。ただ、こればかりはタイミング次第。どんなに早くても1年後などでしょうけど、それまでにお互いの状況も変わってくるでしょうから。この対決については、なんとも言えないところです」 ――"モンスター"と"ネクストモンスター"の対決が実現するなら楽しみですが、一方で"潰し合う"のはもったいないようにも感じます。 「それもちょっとありますけど......それでも、無敗の日本人同士、間違いなく極上のカードではありますね(笑)」 ――中谷選手の適正階級はどこだと見ていますか? 「今の感じだと、ひとつ上のスーパーバンタム級じゃないですかね。バンタム級でも減量がちょっとキツそうですから。年齢的にもスーパーバンタム級に上げたタイミングで、最もパフォーマンスが高い中谷が見られるのではないでしょうか」