「コスト削減や貯蓄はできても、投資家の期待には応えられない」 英紙が日本の「CFO不足」を懸念
CFO(最高財務責任者)の役職を設ける日本企業は増えているが、その多くは経理畑の出身で、欧米のように幹部と肩を並べて経営戦略について議論する人材は少ないという。海外投資家が大きな関心を寄せているいまこそ、日本企業はCFOの役割を見直しする必要があると英紙「フィナンシャル・タイムズ」は指摘する。 【画像】「コスト削減や貯蓄はできても、投資家の期待には応えられない」 英紙が日本の「CFO不足」を懸念 この10年間、日本のコンタクトレンズの輸入量は60%以上も増加している。 スマホの普及やファッション性の追求によってメガネ離れが進み、需要が拡大しているのだ。日本のコンタクトレンズの生産量が低いことも、輸入量が増える一因となっている。 日本がコンタクトレンズと同様、「輸入」の促進を検討すべきなのが、変革の可能性を秘めたCFO(最高財務責任者)だろう。 いま、多くの海外投資家が日本に関心を持っている。だが日本企業の「財務を見る力」は低い。CFO人材の乏しい日本にとって、人材豊富な海外から人を雇うことはひとつの現実的な解決策と言える。
欧米企業とは異なる日本のCFOの役割
昨今、企業ガバナンス改革を打ち出し、8月には中小企業向けM&Aガイドラインを改訂するなど、日本政府は国内外の投資家やステークホルダーの要望に応えようとする姿勢を見せている。東京証券取引所も、上場企業に対して資本の効率化を進めるように促す。こうした流れのなかで、慢性的なCFO不足を解消することは喫緊の課題だ。 帝京平成大学の小林俊之教授によると、東証プライム上場企業のうち、専任のCFOを置いている企業はわずか33%だ。CFO職を設けていない企業は、PBR(株価純資産倍率)が低い傾向にあるという。 CFO不足は、東京株式市場が世界的な注目を浴びている理由のひとつでもある。 日本企業をリストの筆頭にあげるのは、アクティビスト投資家やプライベートエクイティ(PE、未公開株)ファンド、それにセブン&アイ・ホールディングスの買収を目論むアリマンタシォン・クシュタールのような外国企業だ。彼らは、過小評価されているが、資本効率を容易に改善できるような日本企業を狙う。こうした特徴は、優秀なCFOが不在の企業に顕著だ。 数だけでなく、質の問題もある。日本のCFOの多くは、他国のそれとは異なる仕事をしている。日本企業で財務部門のトップを務めるのは、ほとんどの場合、経理部門から昇進してきた人物だ。その多くは優れた財務管理者として活躍し、世界レベルのコスト削減能力と現金を社内に蓄えるためのスキルを磨き上げることで、「失われた数十年」を乗り切ってきた。 彼らは設定された目標を確実に達成するが、そこから先に進もうとはしない。ある投資家は、「日本のCFOは株主資本と負債のバランスを完璧に維持することはできても、両者の理想的なバランスについて考えたり、議論したりはしません」と指摘する。