国史跡・福岡城跡、整備基本計画策定から10年たつが復元進まず…主な要因は「史料不足」
福岡市が、福岡城跡(福岡市中央区)の整備の方向性を示した「国史跡福岡城跡整備基本計画」を策定してから、今月で10年となった。当初計画では2028年頃をめどに複数の櫓を復元予定だったが、「潮見櫓」以外は手つかずで、復元の見通しは立っていない。史料不足が主な要因で、史跡整備のハードルの高さが浮き彫りになっており、市は今後、基本計画の見直しも含めて検討する。(林航) 【イラスト地図】福岡城跡の史跡指定範囲
潮見櫓は来春完成
今月11日、舞鶴公園の北西角に位置する三の丸広場の一角で、かつて海を監視するために存在していた潮見櫓の復元工事が進められていた。復元を担う建設会社「和技研」(福岡県)の大工らは、江戸時代に使われていた古材をかんなやのみで削り長さを調整していた。
潮見櫓は明治期に崇福寺(福岡市博多区)に移築され、仏殿として使われていた。このため、築城当時の木材が残っており、発掘調査で正確な位置が判明したことから、昨年2月、復元工事が始まった。来年春にも完成する見込みで、道路沿いからも見えるため、新たなランドマークになることが期待されている。
大工の国徳宏起さん(35)は「古材と新材のバランスがすばらしい櫓を、市民や観光客の皆さんに見てもらうのが楽しみ」と話した。
陸軍駐屯で写真少なく
福岡市は14年6月に整備基本計画を策定。28年頃をめどに潮見櫓や、天守台そばの「武具櫓」、本丸方向へ向かう「扇坂」、福岡市地下鉄赤坂駅に近い「上之橋御門」などを復元し、「多聞櫓」や石垣の修復を進めていくとしている。
だが、これまでに復元が完了したのは扇坂のみ。武具櫓などの復元は始まっておらず、残り約5年となった計画期間中の復元着手の見通しは立っていない。
将来的には「本丸御殿」や「表御門」、「松ノ木坂御門」、「東御門」、「花見櫓」なども復元し、「福岡の歴史資源の保存・活用のシンボルとしての充実」を目標に掲げる。
ただ、市によると、国史跡の福岡城では、建造物を復元する際、文献や絵図、古写真などの史料が必要になる。