“国会軽視”で躓いた岸政権 安保法案成立目指す安倍政権は?
これほどに国会が軽視された例を私は知らない。そして画策が躓くと今度は過去最長の延長に踏み切り、参議院で成立しなくとも衆議院で再議決できる日程を確保した。憲法に関わる法案で参議院審議を無意味にする事など前代未聞である。私は湾岸戦争からアフガン戦争に至る10年間の米国議会を見てきたが、それに比べて安全保障の議論がこれほど空疎な事をひたすら恥ずかしく思っている。武力行使の条件を「その時にならなければ分からない」とか「手の内を晒せない」と言って切り抜けようとする答弁に愕然たる思いだ。そんな答弁は世界中にないだろう。 岸信介は有能であったが国会軽視で躓いた。それに比べて政治的に未熟な安倍首相が国会を軽視すれば躓かない訳がない。そうでなければこの国の政治は劣化したと思うしかない。 (ジャーナリスト・田中良紹)
■田中良紹(たなか・よしつぐ) ジャーナリスト。TBSでドキュメンタリー・ディレクターや放送記者を務め、ロッキード事件、日米摩擦、自民党などを取材する。1990年に米国の政治専門 チャンネルC-SPANの配給権を取得してTBSを退職、(株)シー・ネットを設立する。米国議会情報を基にテレビ番組を制作する一方、日本の国会に委員会審議の映像公開を提案、98年からCSで「国会テレビ」を放送する。現在は「田中塾」で政治の読み方を講義。またブログ「国会探検」や「フーテン老人世直し録」をヤフーに執筆中