女性検事は容疑者に「社長、いらっしゃーい」、男性検事は「検察、なめんなよ!」…冤罪事件「国賠訴訟」で判明した大阪地検特捜部検事たちの呆れた所業の数々
郵便不正事件の反省はゼロ
プレサンスの横領事件で大阪地検特捜部は「手柄拡大」のため山岸氏に目を付けた。山岸氏は同社を東証スタンダード上場企業に育て上げ、マンションの売上件数で全国トップに押し上げた風雲児としてマンション業界に広く知られていたからだ。 思い出すのは、2010年に冤罪が明らかになり、大阪地検特別捜査部の主任検事や部長、副部長が逮捕された「郵便不正事件」だ。特捜部は高級官僚(当時は厚労省課長)だった村木厚子氏の部下の係長を障碍者団体(自称)に郵便物を安く扱える便宜を図った「公文書偽造」などの罪で逮捕した。それに飽き足らず、「キャリアウーマンの星、弱者に理解がある高級官僚」などとメディアでも評判だった村木氏を逮捕して手柄を大きくしようとした。 担当検事が係長をあの手この手で不当に攻め立て、「課長が認めていた」という虚偽供述を引き出す。まったく今回と同じである。ただ、郵便不正事件では係長が無断で使用した村木氏の印鑑が捺印された書類があったため、検察にとって物証らしきものはあったと言える。しかし、プレサンス事件では山岸氏が関わっていたなどということを示す物証は全くない。 山岸氏は会見で「見立てをして、その通りに捜査する。それでは冤罪が起きますよ」と話した。 捜査側がある程度の事件の筋書きの見立てを立てること自体は不思議ではない。問題は、それだけで突っ走り、他の情報や他言に一切耳を貸さないことだ。 山岸氏は「(検察は)私に『本当のことを言え』と言ながら自分らは覚えていないとかばかり」と怒った。郵便不正事件にも関わっていた秋田弁護士は「山口検事は肝心なところは覚えていないと言い、あとは組織の決定なので答えられないとか、終始、組織防衛だけでした」と話した。 14年前、村木氏の事件で評価を地に堕とした大阪地検特捜部は、そこから何も学んでいない。 粟野仁雄(あわの・まさお) ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に『サハリンに残されて』(三一書房)、『警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件』(ワック)、『検察に、殺される』(ベスト新書)、『ルポ 原発難民』(潮出版社)、『アスベスト禍』(集英社新書)など。 デイリー新潮編集部
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