「選択的夫婦別姓制度」の考え方 自民党は慎重な姿勢…導入するか旧姓扱い認めるか 国民の価値判断の問題になる
【日本の解き方】 夫婦同姓か夫婦別姓を選べる「選択的夫婦別姓制度」については、自民党は慎重な姿勢で、公明党や野党は導入に積極的、経団連も早期導入を提言しているという構図だ。制度のメリットとデメリットをどのように考えればよいだろうか。 【表でみる】選択的夫婦別姓制度をめぐる議論の経緯 現在の民法のもとでは、結婚に際して、男性または女性のいずれか一方が、必ず姓を改めなければならない(夫婦同姓制度)。これが違憲と争われた裁判で、最高裁判所大法廷は、2015年と21年の2度にわたり違憲でないと判断した。同時に夫婦の姓について「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである」としている。 選択的夫婦別姓を主張する人は、女性の社会進出等に伴い、改姓による職業生活上や日常生活上の不便・不利益などを指摘する。一方、現状のまま夫婦同姓でいいという人は、別姓になると家族の一体感が失われたり、子供がどちらの姓を名乗るかで悩んだり、長い目で見ると戸籍制度の崩壊になると心配する。わざわざ別姓にしなくても旧姓の通称使用についての法制度を設ければ十分としている。 最高裁が、夫婦同姓制度にしても選択的夫婦別姓制度にしても、どちらが合理的というより、「最終的には国民の選択である」としているのは、家族観などの価値観に関するからである。 参考までに、海外の例を紹介しておく。国会図書館の21年の調査などによれば、米国では氏名の変更は各州の所管であるが選択的夫婦別姓のようだ。英国、ドイツ、スウェーデン、ロシアも選択的夫婦別姓だ。カナダも各州の所管であるが夫婦別姓が原則で、フランス、韓国、台湾、中国も夫婦別姓だ。オーストラリアでは成人は姓を自由に変更できるので、原則夫婦別姓といっていいだろう。 フィンランド、ノルウェーは、夫婦別姓が原則だが夫婦の姓を合わせる結合姓も選択できる。イタリアやトルコは結合姓だ。 このように各国ともに制度はいろいろあるが、多くの国ではかつて夫婦同姓制度であったが、幾多の制度改正を経て、選択的夫婦別姓か夫婦別姓に至っている。 20年11月に当時の上川陽子法相は「夫婦の同氏制を採用している国は、わが国以外には承知しておりません」と国会答弁している。