【九州場所】〝鬼の形相〟豊昇龍が首位堅守 闘争心に火をつけた大の里
〝鬼の形相〟の背景とは――。大相撲九州場所10日目(19日、福岡国際センター)、大関豊昇龍(25=立浪)が幕内琴勝峰(25=佐渡ヶ嶽)を力強く寄り切って9勝目(1敗)。優勝争いの首位を堅守した。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)は今場所の相撲内容を分析した上で、取組前の気合満点の表情にも注目。豊昇龍の闘争心に火をつけた存在についても言及した。 豊昇龍が盤石の相撲で首位の座を守った。鋭い出足から右を差してまわしを引くと、最後は左で強烈におっつけながら力強く寄り切った。取組後の支度部屋では「一日一番、その日の相撲を考えて落ち着いて相撲を取ろうと思った。それが良かった。トップ? 特に意識していない。自分らしい相撲を取りたい」と表情を引き締めた。 この日の一番について、秀ノ山親方は「豊昇龍は相撲に厳しさがあった。差した後に体を寄せたり、寄りながらまわしを引いて体を密着させたり。要所要所で厳しい攻めが光っていた」と分析する。今場所全体を通じて「立ち合いで下から突き起こしたり、常に自分から攻めている。強引に投げにいくと、体の軽さが出て墓穴を掘る。それが今場所はない。力任せではなく、我慢するところはできている」と指摘した。 さらに、秀ノ山親方は豊昇龍が最後の仕切りで見せる気合満点の〝鬼の形相〟にも注目する。「先場所の豊昇龍は、どこか自信なさげで、それが相撲内容にも表れていた。今場所は気迫が前面に出ている。もともと気持ちで相撲を取る力士。目の前の一番に集中できているのでは」。その闘争心むき出しの姿は、新大関大の里(24=二所ノ関)の存在とも無関係ではないという。 秀ノ山親方は「この何場所かは大の里ばかりが目立っていた。しかも、今場所は同じ大関の番付まで上がってきて、絶対に負けられないという気持ちになっている。自分の持っているものを全て出せれば『俺が一番強い、誰にも負けない』ぐらいに思っているはず。終盤に入ると、技術面以上に精神面の勝負になってくる。自分の力を信じて最後まで戦い抜いてほしい」と奮闘に期待した。 一方で、新大関は優勝争いから大きく後退。3敗目を喫して首位とは2差に開いた。大の里に主役の座を奪われてきた豊昇龍は、今場所こそ先輩大関の意地を見せることができるのか。終盤5日間で真価を問われることになりそうだ。
東スポWEB