日本式経営はアメリカの「前提条件」レベル...「米国最大」のスポーツ市場発展の根底にあった重要な《視点》
さらなるマネジメントの高度化
ドラフト制度も、徹底されています。 NPBでは、競合となった場合くじ引きで指名権を獲得しますが、NFLでは「前年の成績下位のチームから指名」をしていきます。 指名される選手も事前に「指名されたら契約する」という条件を飲んでノミネートしているので、日本のように指名後に契約で揉めることはありません。 有力な新人は弱小チームに行くのです。面白いことに、ドラフトの指名権もチーム間で売買、トレードの対象になっています。 また最近のNFLではルール変更も頻繁に行われています。 その考えかたの基本は「選手の保護」です。 強烈なコンタクトを伴うアメリカンフットボールでは、その備えとして見た目にも特徴的な防具、ヘルメットを使用します。それに加えて、危険なコンタクト、怪我の可能性が高いプレーはどんどん、反則として規制される傾向にあります。 こういった戦力の不均衡解消、危険なプレーの排除は、チーム経営、選手のコーチングに大きく影響します。先に述べた「名選手、名監督ならず」の理由の一つは、こういったマネジメントの高度化が影響しているのです。
日本が見習うべき3つの視点
日本では古くから「いいものを作れば売れる」という考えがあります。いいものさえ、真摯に作っていれば、きっと評価されるという考えです。 しかし、これは間違っています。いいものを作るのは「前提条件」なのです。それを多くの人に知らしめ、広め、提供する手段を講じなければ、「売れません」。 NFLは、この考えを3つのターゲットに向けて実施しています。 まずはファンに向けて。地域密着を地域貢献に留めず、地元のファンをチーム運営に参加させることで、当事者とする。 次にコーチ、チーム経営に向けて。リーグを停滞させないための流動性、チームの変化を余儀なくし、それでも強いチームを作るマネジメント、コーチングを促す。 最後に、選手に向けて。デリケートな問題ですが、アメリカンフットボールは怪我が多いスポーツです。 2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で注目を集めたヌートバー選手は高校時代まではアメリカンフットボールと野球の二刀流の選手でした。 アメリカンフットボールでも大学のスカウト候補に上がっていたといいます。しかし、大学進学時にどちらかを選択することになり、「怪我が少なく、長くプレーできる野球」を選んだそうです。 実際に、NFLの選手の平均的な現役年数は、3~5年です。1年で能力不足でカットされる選手も多いですし、怪我で引退する選手もいます。逆に20年以上トッププレイヤーとして活躍する選手もいます。 しかし、圧倒的多数の選手は数年で現役を退くのです。