被害届を受け渋る警察署…女性は県公安委に苦情を申し立てたが、返答は「対応は不適切。指導した」との通知のみ。知事もついに改革へかじを切った
鹿児島県警の不祥事を巡り、県警を管理する「県公安委員会」の在り方が問われている。県民の代表と位置付けられ、警察業務に県民の考えを反映させるという任務を負うが、活動内容が知られる機会はほとんどなく、機能しているか疑問視する声もある。連載「検証 鹿児島県警」の第2部は、県公安委の実態を捉え、県警の信頼回復へ果たすべき役割を考える。(連載・検証鹿児島県警第2部「問われる公安委」③より) 鹿児島県警の「受け渋り」は昔から?…詐欺被害を訴えても、南署は取り合わず「個人間の貸し借りだ」
「相談者の心情に配慮した対応を」。鹿児島県公安委員会は3月、相談に訪れた女性への対応が不適切だったとして、鹿児島南署を指導した。女性は、50代の男に複数回にわたって2000万円以上をだまし取られたと訴えていた。 女性によると、2022年に3回相談した。署の警察官は「犯罪の構成要件に当たらない」として取り合わなかった。女性はその後、別の署に相談。被害届は受理され、男は詐欺の疑いで逮捕された。 署の対応への不満から、女性は23年8月、窓口の県警を通じて県公安委へ苦情を申し立てた。半年以上たった24年3月、県公安委は「県警に事実関係の調査を求めたところ、署の対応は適切さに欠けると判断した」として、南署を指導した旨を女性に通知した。ただ、具体的な議論の過程は明らかにされていない。 ■ □ ■ 県公安委は、活動状況をホームページで公表している。県警本部庁舎内にある公安委員室で開く定例会と臨時会の会議録を載せており、県警からの報告や県警に対する決裁事項を公にしている。
内容によっては毎回、文言がほぼ変わらないものもある。例えば、苦情に関しては「警察本部から苦情事案の受理について説明があり、これを審議の上、決裁した」とだけ記している。職員の処分に関わるものも「警察本部から監察事案について報告があった」とするにとどめている。県警総務課は「公表すべきでない内容や個人情報が含まれるため、あえて省略している」と理由を説明する。 県公安委は苦情の処理過程について、「調査の結果、警察職員の不適切な職務執行が判明すれば、定例会で指導している」と回答した。 南日本新聞は12月2日、同課を通じて定例会の取材を申し入れたが、「捜査情報や処分者のプライバシーに関する情報が扱われる上、室内の構造が明らかになってしまう」との理由で実現しなかった。 ■ □ ■ 県警の不祥事が相次いで以降、県公安委に対する県の姿勢に変化が見られる。塩田康一知事は10月の定例会見で「県公安委と県警の関係がこれまで通りでいいのかどうかが議論されている」と述べた。
県議の問題提起を受け、11月には委員の選出方法にも踏み込んだ。これまでは県警が提示する参考情報を基に選考していたが、「県民から疑念を招きかねない」と言及。「選出プロセスを見直し、幅広い候補者の中から人選する」として、県が主体となって候補者を選ぶ方針を表明した。 情報公開のあり方についても指摘した。「行政として活動する以上は、内容をできるだけオープンにする必要がある」との見解を示した。 県公安委ホームページに載せている定例会と臨時会の会議録は12月25日現在、9月を最後に更新されていない。
南日本新聞 | 鹿児島