「再建へ精いっぱいやってきた、でも」…奥能登の人々の復興への気持ちをくじいた豪雨
約3800棟が全・半壊した珠洲市。大宮準司・環境建設課長は「地震に豪雨も重なり、珠洲にとどまるにしてもどこで暮らすべきか、高齢世帯を中心に悩む人は少なくない」と話す。
費用負担も重くのしかかる。輪島市町野町の小松武さん(77)は、約500万円かけて改築したばかりの自宅を地震で失い、生きがいだった畑も大雨で泥の海と化した。それでも「生まれ育った地で暮らし続けたい」と、建設業者と再建の相談を始めた。だが、高騰する建設費に加え、緩んだ地盤の改良にも数百万円かかると聞き、「収入はなく、貯蓄と支援金で賄えるのか……」と不安を見せる。
能登6市町の11月1日時点の人口は11万3353人と、元日から6297人減った。住まいの先行きが不安定な状況が続けば、人口減が加速しかねない。
被災自治体は、自宅再建が困難な人のための災害公営住宅の整備も進めるが、課題は少なくない。家屋約6200棟が全・半壊した輪島市は、必要戸数を1000~1500戸と推計。土地の取得を進めるが、大半は洪水リスクを抱える。
県の創造的復興プランの策定に携わった小野田泰明・東北大教授(建築学)は、「東日本大震災の被災地でも多くの災害公営住宅が整備されたが、高齢の入居者が多く、すぐに空き家となる問題も起きた」と指摘。「国や自治体は半壊家屋の改修費の援助を拡充するなど、住まいの選択肢を増やすことが重要だ」と訴える。