見惚れつつ笑ってしまう…菜々緒の演技がスゴすぎる。ドラマ『無能の鷹』でみせる稀有な“女優力”の秘密とは? 徹底考察
指先から溢れる有能感
本作の面白ポイントは、中身は無能である鷹野が、その外見から溢れ出る有能感によって周囲が勝手に勘違いして振り回されるというところにある。つまり、周囲が勘違いしてしまうほどの鷹野の有能感をいかに演出するかが本作の肝となるのだが、菜々緒はそのハードルを易々と越えてきた。 面接会場で鶸田が落とした書類を拾い上げた時の姿勢に一切の無駄が無かったり、なぜか英語の発音が良かったり(相手の言葉を繰り返しているだけで決して英語が堪能なわけではない)と、鷹野の何気ない所作や発する言葉の一つ一つに華がある。 中でも、特筆すべきはその指先。横断歩道を手を挙げて渡る際、指先までビシっと伸びており、どこか高貴なお家柄を想像させる。髪をかき上げる時もゆっくりと指先に髪の毛を耳にかける仕草から品性が感じられ、ついつい視線を奪われてしまう。 加えて、鷹野はくしゃっと笑うことも、眉間にしわを寄せて怒ることもない。喜怒哀楽は伺えるが表情からはイマイチ感情が読み取れない。喜怒哀楽が見えない人にはミステリアスな印象を抱きやすく、その人の一挙手一投足が気になってしまうことは少なくない。そういった言動や表情が底知れぬ有能感を生み出し、実際の鷹野の無能さをより一層笑えるものにしている。
キャラとの年齢差を感じさせない説得力
菜々緒のすごさはそれだけではない。よく「仕事はできるけど部屋の片づけは苦手」「仕事はできないけど世渡り上手」といったギャップを持つキャラはドラマや映画に多く登場しており、そのギャップに可愛らしさや頼もしさを覚えることも少なくない。 ただ、鷹野のそれはギャップとはまた別物のように思う。 「有能感が溢れる立ち振舞い」「ビックリするレベルの無能さ」はいずれも独立しており、「だけど」という接続詞はつかない。有能感と無能さという対極の要素を両立させ、どちらも際立たせなければいけない鷹野という類を見ないキャラを演じ切っている菜々緒の演技力には驚きしかない。 そもそも、鷹野は23歳の新入社員。現在36歳の菜々緒の一回りも年下である。にもかかわらず、菜々緒が演じることに違和感を覚えさせない、年齢のことなど一切気にさせない説得力もすごい。いや、むしろその新入社員離れした貫録が、むしろ鷹野の有能感に拍車をかけていると言えるだろう。 あらゆる意味で菜々緒のハマリ役である『無能の鷹』。そんな鷹野の無能ぶり、奇行には今後も大いに笑わせてもらいたい。 【著者プロフィール:望月悠木】 フリーライター。主に政治経済、社会問題、サブカルチャーに関する記事の執筆を手がけています。今知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けています。(旧Twitter):@mochizukiyuuki
望月悠木