能登復興を見守る 日本最古の木造灯台 石川・志賀町 探訪
日本海に臨む断崖の上に、こぢんまりとした白い小屋がたっている。 石川県志賀町にある旧福浦(ふくら)灯台は日本最古の木造灯台だ。江戸時代の慶長13(1608)年、地元の日野資信(すけのぶ)が、暗闇の中を航行する船を導いたかがり火が発祥だという。その後も日野家が代々、灯台守として明かりをともし続けてきた。現存する灯台は明治9年、日野家17代の吉三郎が建てたものだ。 【写真ページあり】被災を免れた「能登金剛遊覧船」の船 昭和27年に近くに新たな灯台ができ役目を終えた後も、町や住民が大切に管理してきた。町のポスターやキャラクターに採用されるなど愛され続けている。 元日の能登半島地震で志賀町は最大震度7の揺れに見舞われた。灯台に目立った被害はなかったものの、多くの住宅が損壊し、沿岸部には津波も到達した。 古くから交易や北前船の寄港地として栄えた福浦港は天然の良港で、時代が移っても漁師や船員として海をなりわいの場にしている住民は多い。 遊覧船を運営する、木谷茂之さん(55)も持ち船が被災した。「堤防に乗り上げた船を見て愕然(がくぜん)とした」と振り返る。険しい断崖と荒波が造った奇岩が続く名所「能登金剛」を海上から眺める遊覧ツアーは人気で昨年は約4万人が利用した。 3隻のうち津波を免れた1隻で4月末から部分的に営業を再開したが、能登地方では、まだ観光客の受け入れ態勢が整っていないこともあり、客足は戻っていないという。 船に乗り込み、能登の海を進む。奇岩を眺めながら、コースのフィナーレの灯台に向かう。木谷さんは「小学生の頃は、灯台にこっそり忍び込んだりもしました。友達との遊び場でした」と思い出を語る。 日差しで輝く穏やかな海。その向こうに真っ白な灯台が見えてきた。 7月1日、地震から半年を迎える。「これから夏本番。今はまだ1隻しかないけれど、多くの人にこの美しい能登の海を見てほしい」と木谷さん。 崖の上の地域のシンボルは復興を見守り、港が再びにぎわう日を待ちわびている。 (写真報道局 鴨川一也)