「お家芸」の対潜訓練、同じ高度になる瞬間も 海自ヘリ墜落事故
海上自衛隊のヘリコプター2機が、深夜の訓練中に墜落した。「海自の任務の核心」とされる対潜水艦戦の訓練中に起きた衝撃的な事故。防衛省関係者は情報収集に追われ、専門家にも驚きが広がった。 【図解】対潜哨戒ヘリの訓練のイメージ 金沢工業大学虎ノ門大学院教授で海上自衛隊元海将の伊藤俊幸さんは今回の事故について、「貴重な隊員を失ったことは非常に悔やまれる」と話した。「対潜訓練は海自の『お家芸』とも言えるもの。OBとしてとてもショックだ」と話す。 伊藤さんは、中国との間で尖閣諸島問題への対応や、北朝鮮のミサイル発射に備える必要もあるなど、海自隊員の多くが実際の任務にあたっており、「訓練を十分にこなせていない可能性がある」。根本的な問題として「任務と訓練に十分な人数を同時に割けないという隊員不足」を挙げた。 元海自哨戒ヘリ操縦士の小原凡司・笹川平和財団上席フェローによると、対潜訓練では、ソナーをつり下げるためのホバリング(停止飛行)の際、ホバリング高度と飛行高度の差が生じ、複数機が同高度になるタイミングが生じるという。 小原さんは「互いの機体が見えない夜間は特にリスクがある」と指摘する。ただ、衝突防止灯などをもとに常に互いの機体の位置を確認するはずで、接触するほど近づくことは通常、考えにくいという。 特に機長は厳しい訓練や検定を受けており経験は豊富という。小原さんは「不測の事態があった可能性もあり、現段階では原因の推測が困難だ。両機のフライトレコーダーのデータが究明に向けたポイントになるだろう」と話した。(中野浩至、高浜行人)
朝日新聞社