尚志(福島県郡山市)、東福岡(福岡県)と互角 敗戦乗り越え成長 全国高校サッカー選手権初戦惜敗
埼玉県さいたま市で29日に行われた第103回全国高校サッカー選手権1回戦で、福島県代表の尚志は3度の優勝経験を誇る東福岡(福岡県)と互角の戦いを繰り広げた。県高体での敗戦や高校生年代最高峰リーグからの降格―。悔しさを味わうたびに課題と向き合い、チーム力を高めてきた。全力で走り抜いた80分間とPK戦。仲間と積み上げた努力は、全国の大舞台で確かな成果となって表れた。 今季の「高円宮杯JFAU―18サッカープレミアリーグ」を戦ったチーム同士の対戦は、初戦屈指の好カードと注目を浴びた。会場のNACK5スタジアム大宮には6896人が詰めかけ、熱気に包まれた。 尚志は1日のプレミアリーグ・青森山田高戦で右鎖骨を折ったFW矢崎レイス(3年)が先発で復帰。相手にボールを握られる時間もあったが、攻撃陣が果敢にゴールを狙った。試合を通して相手を3本上回る7本のシュートを放った。ボールを取られても素早い寄せで奪い返した。「プレミアでの戦いを通して粘り強く守る力が付いた」と仲村浩二監督。相手に自由を与えず、最後までゴールを割らせなかった。
しかし、激闘の結末は残酷だった。イレブンは歓喜する相手を見つめ、西日が差すピッチに崩れ落ちた。 この1年は苦難が続いた。6月の県高体決勝で帝京安積に敗れ、14連覇を逃した。福島県開催で2校が出場した全国高校総体(インターハイ)は3回戦敗退。プレミアリーグ東地区は11位で、プリンスリーグ東北への降格が決まった。 リーグ最終節、小室雅弘コーチの言葉が選手を突き動かした。「コミュニケーションが足りない。言いたいことがあるなら言わないと」。信頼関係を強めてプレーに生かしてほしいとの思いだった。選手は週1回のミーティングで今まで以上に意見をぶつけ合った。寮生活での会話も密になった。この日も「一瞬の緩みが失点につながる」と声をかけ合い、集中力を保った。 チームで歴代屈指の運動量を生かした厚みのある攻撃は、強豪相手にも通用した。仲村監督は「悔いのないゲーム。ただ、ゴールが遠かった」と繰り返した。主将のFW千住澪央(3年)は、「練習からもっと精度を上げて決定力や守備の強度を磨いてほしい」と後輩に託した。
■OBや保護者 健闘たたえる 尚志の応援スタンドには生徒や昨年主力だった安斎悠人(J1京都)、網代陽勇(早大1年)らOB、保護者、学校関係者ら約600人が訪れ、選手を後押しした。試合終了の笛が鳴ると健闘をたたえ、惜しみない拍手が送られた。 尚志サッカー部保護者会副会長の針生真由美さん(50)は「プレッシャーもあったと思うが、強敵相手に粘り強く戦ってくれた」とたたえた。