「怒らない大会」をはじめて9年 益子直美が目指す幸せなスポーツの形
「ちゃんと打て!」「何やってるんだ!」。聞くだけで不快な言葉です。スポーツの形を変えようと、益子直美さんはバレーボールの「怒らない大会」をはじめて、10年目を迎えます。その大会で見えてきた子どもたちの笑顔、監督への思い。もう理不尽な怒りはいらないはずです。(全5回中の3回) 【画像】思わずニヤついちゃう!コーチも子どもたちも笑顔の「怒らない大会」の様子ほか(全14枚)
■大会前日「怒ってはいけない」ルールを提案すると ── 2015年から、福岡県で小学生のバレーボール大会「益子直美カップ」を主催されています。この大会では、「監督が怒ってはいけない」ルールがあるそうですね。
益子さん:友人を介して、福岡県で小学生のバレー指導をしていた北川さんご夫婦から「小学生のバレーボール大会をやってほしい」と依頼をいただいたのが、そもそものきっかけでした。 「怒る指導」は、まだ根強く残っていて、監督から怒られ、ぶたれ、泣きながらバレーをやっている子どもたちの姿をたくさん見てきました。私自身、怒られる指導をずっと受けてきて、それが原因でバレーが嫌いになってしまった。だからせめて、自分の冠がつく大会は、子どもが笑顔で楽しめるものにしたい気持ちが強かったんです。そこで、大会前日の打合せで、「怒ってはいけないっていう、ルールでやりたいんですけど…」と、スタッフに提案しました。
── 大会の前日とは、急ですね。 益子さん:なかなか言い出しづらくて…。でも、プログラムを見た瞬間、「言っても大丈夫そうだな」と、ピンと来たんです。ふつうの大会は開会式を終えたらすぐに試合が始まるものですが、プログラムを見たら、午前中は、すべて「遊びの時間」。クイズをしたり、チーム対抗のリレーをしたりと、いろいろな「遊び」要素が盛り込まれているのを見て、自由で楽しい大会なんだなと感じました。 ── ユニークですね!
益子さん:じつは、北川さんの奥さんは元実業団の選手。ご自身も高校時代に、怒る指導を受け、それがすごくつらかったそうです。指導に悩みを抱えながらも、「みんなを強くしなくては」というプレッシャーから、ご自身が嫌っていた怒る指導をしてしまい、それにすごく悩まれ、チームを解散。新たにチームを結成したタイミングでした。ですから、「怒ってはいけないルール」に、すぐ賛同してくださったんです。 大会当日、開会式で「じつは、この大会にはルールがあります。監督は…怒ってはいけません!」と宣言したところ、監督さんたちからは、一斉に「え~っ!」とザワザワし始めました。逆に、子どもたちは「やった~!」と、大喜びでしたね。