中国との国境1400キロに三重のフェンス…巨大な収容所と化す北朝鮮
10月3日に丹東から眺めた黄金坪(11.45平方キロ)は、一時は中国と北朝鮮が共同開発を約束した経済特区だった。開発事業が暗礁に乗り上げた後は、北朝鮮住民の脱北窓口の役割を果たした。ここの死角地帯を横切って数万人が中国へ渡ってきた。脱北・密輸を取り締まっていた北朝鮮の国境警備隊の軍人や保衛部の幹部すら、黄金坪と丹東を行き来して食糧・資材の密輸でカネを稼いだ。コロナの期間においてもふさがることがなく、北朝鮮住民の命をつなぐ場所と考えられていたここが、今では北朝鮮側のぎっしり並ぶ監視カメラと50メートル置きに火をともしている哨所によってふさがれ、完全に孤立した。丹東の公安当局も21年に鴨緑江のパトロール強化のための専担組織をつくったのに続き、22年には黄金坪から脱出した北朝鮮住民を逮捕するなど、取り締まりを強化している。19年から23年初めまでの中朝国境の衛星イメージ分析結果(米国ミドルベリー国際問題研究所)によると、少なくとも489キロの区間で鉄条網やコンクリート障壁などが国境に新たに設置されたり、拡張されたりした。 中国東北部では、北朝鮮側が豆満江・鴨緑江沿いに電気鉄条網や地雷を新たに設置している、といううわさも聞かれる。北朝鮮軍当局は今年1月、中国との国境地域で警備の弱い箇所を選び、地雷を埋設せよという指示を下したという。かつて国境にぶら下げていた「警報用」の空き缶が、「殺傷用」の地雷に変っている-という話だ。中国側でも、北朝鮮から来る越境者を防ぐフェンスをますます高くしている。丹東の鴨緑江沿いにある「一歩跨」という地域では、昨年3月・4月に高さ5メートルのフェンスが新たに設置されたという。一歩跨は「一歩踏み出しさえすれば川を跨(また)げる」という意味で付けられた名称だ。 朝中をつなぐあらゆるインフラ建設事業は、12年の金正恩政権発足と翌年の親中派・張成沢(チャン・ソンテク)氏処刑を起点として停滞した、と言っても過言ではない。北朝鮮と中国の陸路貿易を大幅に促進する新たな橋として注目されていた新鴨緑江大橋(14年竣工)は、10月6日の修交75周年に合わせて開通するだろうと期待されていたが、白紙となった。11年に本格推進された北朝鮮の鴨緑江・威化島共同開発は、13年以上も中断状態だ。中国人の北朝鮮観光も、中国のコロナ封鎖が解除された後、1年9カ月たっても再開されていない。 北朝鮮住民らの唯一の希望だった川そのものもふさがれている。北朝鮮側は、豆満江・鴨緑江沿いに運航する船に保衛部の幹部を乗せるなど、脱北の試みの監視を強化しているという。川の両岸を行き来していた密輸業者らは今や、慣例的に上納していたカネの10倍を保衛部の幹部に賄賂として渡しても逮捕を逃れられないありさまだ。 朝中関係の異常な気流が国境封鎖の強化を招いたという分析がある。9月に平壌で開かれた北朝鮮の政権樹立76周年記念行事には、王亜軍・駐北朝鮮中国大使が参加せず、北朝鮮は今年6月に国営メディアの送信手段を中国の衛星からロシアの衛星に切り替えた。北京の外交消息筋は「中国は米国に対抗するカードである北朝鮮を自国に完全に依存させたがり、7回目の核実験の可能性もコントロールすることを望んだが、北朝鮮がロシアと軍事的に密着し経済協力まで強化して中国とは距離を置いていることから、不満の気配をはっきりと見せている」と語った。 北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員