リメイク版『ディズニー エピックミッキー』開発陣インタビュー。友情、忘れられた者、そしてプレイヤーが現実に体験するかもしれないすべてについてのストーリーがある【TGS2024】
2024年9月24日に発売となった、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC向けソフト『ディズニー エピックミッキー:Rebrushed』。 【記事の画像(10枚)を見る】 本作は忘れ去られたキャラクターたちの暮らす街“ウェイスト・ランド”が舞台。ウェイスト・ランドに閉じ込められてしまったミッキーマウスが、魔法の筆を駆使してさまざまなキャラクターたちと関わりながら、もとの世界へ帰る方法を探す物語だ。本作は、国内では2011年にWii向けにリリースされた『ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~』のリメイク作となっている。 2024年9月26日~29日の4日間(26、27日はビジネスデイ)、幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2024(TGS2024)で、『ディズニー エピックミッキー:Rebrushed』のパブリッシャーであるTHQ Nordicと、開発を手掛けるPurple Lampのみなさんにインタビューを実施。リメイク作を制作するにあたっての経緯や思いなどを聞いた。 Pan Schroder(パン・シュローダー): THQ Nordicシニア・プロデューサー。文中はパン。 Mineheart Ablaza(マインハート・アブラーザ): Purple Lamp アート・アウトソーシング兼アート・プロデューサー。文中はマインハート。 Jason Mallet(ジェイスン・マレット): Purple Lamp ゲーム・ディレクター。文中はジェイスン。 Jenny Brozek(ジェニー・ブロゼク): Purple Lamp シニアコンセプトアーティスト。文中はジェニー。 オリジナル作品へのリスペクトと、現代のユーザーが楽しめるような工夫を取り入れた ――本作は2011年にリリースされた『ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~』のリメイク作品となりますが、リメイクにいたった経緯やこだわったポイントは何でしょうか?: ジェイスン: 私たちにとって重要だったのは、いまから何年も前に出されたオリジナル作品のスピリットを捉えることでした。オリジナル作品はディズニーの歴史をキャプチャーしていますが、どんな形であれ、誰もがミッキーマウスを知っていますよね。このオリジナル作品の魂とも言える部分を捉えることは、最重要ポイントでした。 また、リメイクの作業に入ると、この作品そのものの中にはオリジナルのデベロッパーたちによって込められたものがあることに気付きました。多くの人たちにとってこの作品は、ディズニー・フランチャイズであるだけでなく、この『ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~』というゲームそのものが重要であり、非常に特別なものであることがわかったのです。 ――開発するにあたっての柱となった部分を教えてください。: ジェイスン: 私は当初リード・ゲームデザイナーとしてこのプロジェクトに加わり、まずつぎの4つを開発の柱としました。 ひとつめはノスタルジア。弊社ではアイコニックなキャラクター、アイコニックなストーリーを扱ったゲームを作っており、私たち自身がこうしたキャラクターやストーリーを心から愛しているので、全力を尽くすことに誇りを感じています。 ふたつめは、3つのC。これはカメラ(Camera)、コントロール(Control)、キャラクター(Character)の頭文字3つを指しています。オリジナル版ではカメラは固定されていたため、リメイクするにあたってネックになると感じる人もいました。Wiiのアナログスティックはひとつだけでしたが、いまのプラットフォームにはふたつ付いていますので、ふたつめのスティックにカメラコントロールを追加できるということです。実際にやってみると、驚いたことにこのゲームは問題なく動作しました。 3つめはダンスパーティー。キャラクターがいて、プレイヤーはそれを操作してワールドとインタラクションするわけですが、それがひとつのダンスパーティーのようにまとまっているということです。すべてのものが動いていることが重要で、これはディズニー・フランチャイズのスピリットでもあります。 4つめは、3つのR。これはレビュー(Review)、リスペクト(Respect)、リブラッシュド(Rebrushed)の頭文字3つを指しています。レビューは、オリジナルゲームを見て吸収すること。ディズニーパークスからカートゥーンまで、当時彼らが参考にしたものを真に理解することでした。そこから一度オリジナルをそのままの形で作ることで、自分たちがオリジナルにどのようなリスペクトを感じるかを理解できました。そしてリブラッシュしたのです。それからリメイク版ならではの要素(新しい道や謎など)を追加し、レベルデザインも修正しました。リメイク作業の中で、オリジナル版へのリスペクトはつねに欠かさないようにしていましたね。 ――タイトルにもある“Rebrushed”は造語ですよね?: パン: そうですね。ミッキーマウスは武器として、そしてツールとして、マジックブラシ(魔法の筆)を持っています。この魔法の筆で、さまざまな物質や世界そのものに関与するわけです。Rebrushedとは魔法の筆を使っていろいろと試し、ワールドと戯れることです。アビリティー、キャラクター、レベルなど、そしてアートアセットなどすべてが遊びの材料なのです。 ――それぞれの立場から、こだわった点をお聞きしたいです。: ジェイスン: 私の前職はゲーム・デザイナーでした。いまはディレクターになりましたが、役割としてはあまり変わりません。弊社で私たちが作っているのは空間を移動するゲームです。本作でミッキーが移動する空間は一風変わったディズニーランドなのだと言えるでしょう。私はつねにこだわりを持って制作に挑んでいますが、本作では早期にその部分を固めることができ、とてもうれしく思いました。 私たちが追加したもののひとつはメインストリートにシネマ・インテリアを加えたことです。ここでプレイヤーは、マップ移動の際に遊べる横スクロールアクションを再度プレイすることができ、逃したアイテムなどをすべて集められます。また、ミュージアム・インテリアと呼ばれるところも追加しましたが、これはプレイヤーがゲームを進める中で進化していくものです。プレイヤーのみなさんは、いまは私がまだお話しできない追加要素をすでに体験していますが、とても気に入ってもらっているようですね。 マインハート: 本作はアートのボリュームが非常に大きいので、チーム一丸となることが大事でした。多くの才能あるアーティストが必要だったこともそうですし、みんなが積極的に意見して解決策を共有しなければならない場面が何度もありました。私たちの技術を使って3Dアート・パイプライン、スプライト・アニメーション、ライティング・システムをよりよいものにしていきました。 プログラミング・チームにも感謝しています。彼らは私たちの要望に応えてくれたからです。「これはヤバイかも」という局面もありましたが、プログラミング・チームも含めたチーム全員で乗り越えることができました。 パン: 私はTHQ Nordic側にいて、直接ゲームを作る立場ではありませんので、少し距離を置いたところからお話しします。本作にとって重要であり、私がこだわりを持っているのは、モーション・コントロールです。Wiiからデュアル・スティックコントロールへの移行にともない、Nintendo Switchとプレイステーション5のモーション・コントロールをサポートしました。 THQ Nordicの人間として、私はデベロッパーとのコミュニケーション、ディズニーとのコミュニケーション、そして社内のコミュニケーション、これらすべてのコミュニケーションのハブの役割を担っています。うまくいっているときもあれば、そうでないときもありましたが、関わった人々全員とハグを交わせるような関係性を築いてきました。 ジェニー: コンセプトアート・チームにとって重要だったのは、オリジナル版に出てくる要素はどのディズニー作品から取り入れられているのか、そのすべてを把握することでした。これはリスペクトというテーマに関わりますし、ディズニーの大ファンとして、絶対に外せない重要な部分です。 オリジナル版のキャラクターや建物もいちから作られたわけではなく、ディズニーパークあるいは古いディズニー映画に端を発しているのです。探偵の仕事のようなもので、たいへんなこともありましたが、ほぼすべての要素を見つけることができました。それだけでなく、私たちはさらに独自の要素を取り入れ、あちこちにイースターエッグを入れることもできました。 ――イースターエッグとは、たとえばどのような? ジェニー: たとえば、メインストリートの建物です。ディズニーファンや、ディズニーパークに行ったことのある方にはわかるかもしれませんが、このメインストリートの建物はパリのディズニーランドから来ているもの、カリフォルニアのディズニーランドから来ているものなど、複数の建築物が取り入れられていました。 また、私は『キングダム ハーツ』の大ファンでもあるのですが、ファンのあいだでは『ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~』と『キングダム ハーツ』はつながりがあると噂されているのです。これら両作品のミッキーマウスは同一人物で、『ディズニー エピックミッキー ~ミッキーマウスと魔法の筆~』はある種、『キングダム ハーツ』の前日譚であると。そこで、小さなハートなど『キングダム ハーツ』を想起させるものをこっそり取り入れています。 ――パンさんにお聞きしますが、THQ Nordicの立場から見てPurple Lampの魅力は何でしょうか?: パン: ハートがあることでしょうか。ほかの人に対して寛大な心を持っています。ゲームに対しても仕事に対しても。もちろん、どのデベロッパーもある種そうだと思いますが、Purple Lampには自分の仕事をきちんと把握し、それをどう達成するかに情熱を持っている人たちが集まっています。これは稀なことです。 さらに言えば、Purple Lampは私たちの本社から公園を挟んだ同じウィーン市内あるという関係性にあります。歩いて訪ねて行き、公園を散歩しながら意見を交わせる間柄というのは、とても幸運なことです。 ――本作ではミッキーマウスと対をなすようにオズワルドが登場しますが、彼について教えてください。 ジェニー: 私はオズワルドが大好きで、いまもピンを付けています。パワフルなキャラクターであるところがお気に入りです。彼は“しあわせウサギ”ですが、一方で切実な葛藤も抱えています。ウェイスト・ランドはオズワルドたちの街になるはずだったのに、彼のワールドは破壊されてしまい、想像していたような脚光を浴びることができませんでした。 さらにはいろいろなことに対処しなければならず、ガールフレンドも失踪してしまいました。それでも彼はミッキーに友だちになるチャンスを与えるんですよ。オズワルドの懐の深さを現していると思います。また、私がウサギは大好きということもあって、私にとって彼はパーフェクトなキャラクターです! ジェイスン: オズワルドはディズニーが初めて生み出したキャラクターです。彼がディズニーを去って年月が経ったいま、戻ってきて再び活躍できるというのは喜ばしいことです。彼とミッキーはある意味兄弟のようなもので、似ているところもありゲームを通してときには仲違いもしますが、最後には解消されるでしょう。 マインハート: オズワルドはとても親しみやすいキャラクターですが、彼が忘れ去られたらどう感じるのか、そして彼が戻ってくる重要性を明らかにしたゲームは多くないと思います。本作の最後のステージで、みなさんも私と同じくらい心を動かされたならうれしいです。 パン: みんなが素晴らしい説明をしてくれたので、私は表面的なことに留めます。本作はダークな世界観でワールドが形成されていますが、それはオズワルドのせいではなく、ミッキーマウス自身が災難を引き起こしたためです。オズワルドは、ほかの3人が言ったようにラッキーなラビットなのです。あくまで、ただただ忘れ去られてしまっただけ。ゲームだけでなく、カートゥーンなどで彼の実際の姿を見ればわかるように、オズワルドは“しあわせウサギ”なのです。 ――日本のプレイヤー向けにおすすめしたいポイントなどはありますか?: ジェニー: いずれも思い入れ深いものばかりなのですが、スモールワールドやタワーボスは特別思い入れがあります。タワーボスは本作の最初のボスですね。また、オリジナル版のバイブスを維持しつつ、よりダークに、そして少しおもしろおかしく感じてもらえるように変化させたところも見てほしいです。私たちは試行錯誤の結果これを実現しましたが、それとともにそれぞれのエリアに多くのディテールを加えました。ディズニーパークで隠れミッキーを探すように、細かいとこまで注目していただけたらうれしいです。 みなさんがストーリーとワールド、そしてゲームの進行とともに深まるミッキーとオズワルドの友情を楽しんでくださることを願っています。 ジェイスン: プレイヤーのみなさんは新しいコントロール、カメラワーク、そしてミッキーの新しいアビリティを楽しんでくださっていると思います。ですが、私たちが本作の中に隠したいくつかの秘密はまだ発見されていないのでは? 一定のことをやり終えて、コレクションアイテムをコンプリートするなどしたプレイヤーだけがこの秘密に触れられます。3回、4回とプレイして、すべてのものを集め終わってからメインストリートに行ってみてください。前にはなかったものが見つかるかもしれませんよ。 ストーリーやビジュアルだけでなく、オリジナルをプレイした方はもう一度、そして初めてプレイする方もこのモダン・アドベンチャーをじっくり楽しんでいただきたいです。 マインハート: 私は日本のみなさんにレベルとレベルのあいだ、オリジナルゲームではワールドからワールドへの移行に使われていた横スクロールアクションに注目していただけたらなと思います。ここにはたくさんの愛情とディテールを注ぎ込みました。古いカートゥーンを見てゲームをプレイすると、そこにはオリジナル以上のものが見えます。本作を見てもそれ以上のものに気づくかもしれません。単なるひとつのゲームではなく、ひとつのユニバースなのです。そのユニバースをもっと探索したいと思っていただけたらとてもうれしいです。 本作を手に取って、私たちが本作を作っているときに感じたことをみなさんにも感じていただきたいです。たくさんの情熱とハートを込めて作りました。たっぷりプレイして、満足感を味わっていただけたら最高にうれしく思います。 パン: 3人が全部カバーしてくれましたので付け加えることはあまりないのですが、横スクロールアクションについては触れておきたいです。ゲームにあるものすべてを見つけるには1度では足りないので何度もプレイしてほしいです。そこが本作の特別なところだと思います。大筋を把握するだけでも少なくとも2回のプレイが必要です。本作ではオリジナルにはない秘密や新しい道が作られているので、1回では見つけることができません。ジェニーがメインストリートについて言及しましたが、インテリアにも注目していろいろ見つけてほしいと思っています。 まずは楽しんでください。そして単にジャンプしたり走ったりするゲームとしてプレイするのではなく、ストーリーとキャラクターの奥深さ、ストーリーの内容をよく理解してほしいです。そこには友情のストーリー、忘れられた者のストーリー、そしてみなさんが現実に体験するかもしれないすべてについてのストーリーがあります。