2024年春夏ファッションのキーワード6選 異なるテイストの掛け算がカギに
連載《ファッションハック》Vol.22
2024年春夏のファッショントレンドは二面性を備えた「クロスオーバー」系が勢いづきそうです。基本形はシンプルでミニマルなムードと、アートやひねりの要素が交じり合う掛け合わせ。すっきりとドレッシー、落ち着きとドラマチックなどがとけあう「ダブルフェイス」型が主役に浮上する気配です。 【写真で見る】上品さと強さのミックスなど、スタイリングでムードや印象を深める試みが相次いだ、2024年春夏の有力ブランドの新作はココからチェック! 今回取り上げた6つのキーワードはすべて異なるテイストの掛け算になっています。背景になっているのは、居場所や時間帯ごとに着替えず、1日をしなやかに過ごしたいという気持ちや、自己表現としてのファッションを優先する意識。2種類以上の雰囲気を自由にミックスすることは、自分らしいコーディネートにもつながります。新作を手がかりに、6つの新傾向を代表的なルックで解説していきます。
■シアータフネス(Sheer Toughness)
【はかなげな表情×ハンサム感=自立した女性像】 透けるシアー素材は長期的なトレンドが続いています。夏の長期化を背景に、さわやかに過ごせるツールは選択肢も多彩に。 涼やかなシアー服は本人が心地よいだけでなく、周りの目にも涼感をもたらします。あからさまな露出を避けつつ、うっすらと素肌を透かし見せるさじ加減が大人のたしなみ。エアリーな素材に異素材やメンズ風アイテムを引き合わせるサマーレイヤード(夏らしい重ね着)が打ち出されました。 ハンドクラフト技を注ぎ込んで、はかなげな表情をまとわせながら、ハンサム感も添えるのが賢い掛け合わせです。「DIOR(ディオール)」のスカートは優美なレースのモチーフ越しに素肌をほのかに透かし見せ。手仕事のレースがエレガントなムードを薫らせます。タフな雰囲気のダメージ加工を加えたメッシュ地タンクトップとライトアウターを重ねて、男性中心社会でインディペンデント(独立)な立場を主張する、反逆心を秘めた強い女性像を印象付けました。
■クワイエットウェルネス(Quiet Wellness)
【伝統×ヘルシーさ=特別感を醸成】 飾り気を抑え、気品を宿す装い「クワイエットラグジュアリー」が支持を広げたのを受けて、さらにアレンジを加える試みも進んできました。 極上素材の投入や時を超える「タイムレス感」の強調が新たな見せどころに。シンプルな見え加減に、格上テイストを忍び込ませる提案です。健やかさを重んじる「ウェルビーイング」(心身の健康や幸福)の流れを追い風に、ヘルシー感を盛り込む動きも出ています。 「HERMÈS(エルメス)」は乗馬からインスピレーションを得たバスキュールジャケットにゆったりとしたハンサムなパンツで合わせました。ジャケットの中に着た白のショート丈トップスはニットの上からレザーを配し、刺繍(ししゅう)を施したハイブリッドなアイテム。手仕事技がのどかで上品な着映えに導いています。足元はトングサンダルを履いて、気負わない「抜け感」を演出。伝統とヘルシーさの交差が特別感を醸し出しました。