ドラマ「地面師」でブレイク「ライフの方が安い爺」は薄幸の老人役で誰もが見ている役者?
辛酸なめ子のじわじわ時事ワード【ライフの方が安い爺】
Netflixで配信され、大ヒット中の大根仁監督のドラマ「地面師たち」。綾野剛と豊川悦司のダブル主演で、小池栄子、ピエール瀧らキャラが濃い俳優たちが、架空の不動産取引で巨額のお金をだまし取る「地面師」一味を演じていますが、負けない存在感を放ったのが第1話に登場する佐々木というおじいさんです。 【イラスト】大谷翔平選手の妻・真美子さんが持つバッグの抜群の宣伝効果はエルメス「バーキン」並み? 佐々木は地主になりすまし、東京・恵比寿の10億円の土地の最終決済の日に、偽造書類と共に取引の場に同席。そこで土地を買う不動産会社側の司法書士が、本人確認の鋭い質問を浴びせます。 挙動不審気味になんとか生年月日や干支を答えた佐々木。しかし、ふだん買い物をする地元スーパーを聞かれ、答えに詰まってしまいます。とっさに豊川悦司演じる地面師のリーダーが、イヤホンから答えを指示。言われた通りに「家から駅へ向かうとピーコックがあるのですが、外苑西通りを渡ったところにあるライフへよく行きます。ライフの方が安いので」と返答し、本人確認の関門をパスした、というシーンです。 このおじいさん大丈夫?とハラハラさせられる一連のやりとりがあまりにリアルで、佐々木を演じた五頭岳夫氏(76)が大ブレイクしました。決めぜりふから「ライフの方が安い爺」などと呼ばれ、ファンが急増しています。イヤホンごしに指示されるシーンで突然「あぁっ!」と叫んだのは、実際に急にイヤホンから声が聞こえて驚いた、というエピソードもかわいいです。 五頭氏は、これまで誰もが一度は見ているといってもいいくらい、数々のドラマや映画、CMなどで、エキストラから脇役まで幅広く活躍しています。薄幸の老人役が多く、過去にはホームレスの死刑囚役や殴られて生き埋めにされる役なども演じたそうです。インタビューを読むと、大病や借金など波乱の人生の歴史が刻まれているようです。 本人のXでは、「昨年5月カメラテスト、6月撮影10月最後の轢殺を撮影しました!」とスケジュールを公開。実際に自宅から徒歩1分の行きつけのライフを背景に撮った写真も。「周りも私もCM依頼、まってます!?」とライフにラブコール。ファンにも丁寧に返信しています。投稿からは、仕事が次々と入っている様子が伝わります。経済的に豊かになり、高級感あるライフのオーガニック商品ブランド「BIO‐RAL(ビオラル)」ユーザーになっていそうです。
星の権利書
土地の権利書といえば、地面師がそろえた捏造書類以上に法的効力がなさそうなのが、「月の土地」「火星の土地」などの権利書です。 アメリカ人のデニス・ホープ氏が、月や火星など他の星の土地に目を付けて「地球圏外不動産業」を展開。ネットで「月の土地」約1エーカー(約4000平方メートル)分を2700円で購入できます。夢を買うようなものですが、将来、有人飛行が一般化したり、移住が可能になったりしたら、権利書を行使したくなる人も現れそうです。いつの間にか月面地面師や火星地面師にならないように注意したいです。(漫画家・コラムニスト、エッセイスト)