『グランメゾン・パリ』期待通りの好スタート それにしても塚原あゆ子監督はいつ寝てる?
2025年最初の週末の動員ランキングは、『はたらく細胞』が週末3日間で動員46万6000人、興収6億4100万円をあげて4週連続で1位に。公開から24日間の累計動員は307万2200人、累計興収は41億3000万円。正月興行という要因もあるとはいえ、『はたらく細胞』の週末興収はこれで2週連続で前週超え。興収50億円を超えるのも時間の問題となった。 【写真】金髪姿の木村拓哉 2位に初登場したのは木村拓哉主演、塚原あゆ子監督の『グランメゾン・パリ』。週末3日間の動員は40万9000人、興収は6億1300万円。初週の週末成績では『はたらく細胞』の牙城を崩せなかったものの、同作の公開は月曜日の12月30日。公開から7日間の累計動員は96万5400人、累計興収14億円。冬休みが終わったウィークデイに入ってからも順調に数字を伸ばしていて、爆発力こそないものの、ひとまずは期待通りのヒットになりそうだ。 『グランメゾン・パリ』の公開日が12月30日に設定されたのは、その前日の12月29日に地上波でテレビドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)のスペシャル版の放送を予定していたからだろう。数ヶ月前にマスコミ試写で『グランメゾン・パリ』を観た時はその事情を知らず(スペシャルドラマ放送の発表はされていたのだが、『グランメゾン・パリ』を観終えてから知った)、「なんだか話が飛んでない?」というのが最初に出た感想だった。いずれにせよ、その時点で12月29日に放送された『グランメゾン東京』のスペシャルドラマを視聴することは不可能だったので、作品評価においてもストーリー展開については保留にせざるを得ないという事情があった。 2017年に放送されたテレビドラマ『グランメゾン東京』の主要エピソードの演出を務めていた流れもあって、今回の『グランメゾン・パリ』の監督もすることになった塚原あゆ子は、これで昨年8月公開の『ラストマイル』、今年2月公開の『ファーストキス 1ST KISS』と合わせて、半年の間に3作もの劇場用長編映画、それもすべて東宝配給の大規模公開作品を手がけたことになる。しかも、その間には主要エピソードの演出を務めたテレビドラマ『海に眠るダイヤモンド』の放送(2024年10月~12月)、そして年末の『グランメゾン東京』スペシャルドラマの演出まで手がけているので、撮影時期が重ならないようにスケジューリングはされていたのだろうが、尋常ではない仕事量と言うしかない。 作品によってバラツキはあるとはいえ、塚原あゆ子の演出家として手腕は確かなもの。テレビドラマの映画化作品がすっかり実写日本映画のメインストリームとなった昨今、大きな作品の仕事が1人の演出家に集中するのは仕方がないことだが、日本のメジャー映画において、相変わらず新しい監督を抜擢する機運が高まる気配がないのは気になるところだ。
宇野維正