近未来的なモノレールの風景、沈む夕日…「地球の歩き方」が再発見した北九州市の魅力
◆2カ月で3回重版 見所多く「ページ足りない」
旅行ガイド本の定番「地球の歩き方」が初めて国内の市域を対象にした北九州市版が、同シリーズの国内版として最大のヒットになっている。2月の発売から2カ月あまりで3回重版され、発行部数は累計約7万部。転勤を挟んで計7年近く市内に住み、日頃からまち歩きを楽しんでいる記者にとっても、行ったことのない場所がたくさん載っている。ガイドを手に改めて北九州を歩いてみた。 遠見ケ鼻から夕日を見る北九州市版担当プロデューサーの日隈理絵さん(本人提供) 巻頭特集は、近代化を物語る門司港レトロ地区、昭和の風情が残る旦過市場、夜景スポットなどテーマに及ぶ。海に囲まれ魚種が豊富で新鮮なすし、地域に根付いた鉄鍋ギョーザや焼きうどんなどグルメの紹介も充実。約10人のライターのまとめ役だった毛利智子さんは「最初は『北九州市だけで1冊作れるのか』と思っていたけど、調べていくとページが足りないくらい見どころが多かった」と話す。 表紙は、北九州の玄関口、JR小倉駅ビルからモノレールが走り出す場面のイラスト。市民には日常的な風景だが、地球の歩き方編集室の人たちは「近未来的でわくわく感がある」と受け止めたそうだ。 表紙に登場するモノレールの車両には、北九州ゆかりの漫画家松本零士さんの代表作「銀河鉄道999」のキャラクターが描かれている。運行する北九州高速鉄道によると、このラッピングが施されているのは全9編成のうち1編成だけで、待っていてもすぐに見られるとは限らない。「表紙と同じような写真を撮りたい」という人は、同社に問い合わせれば、「銀河鉄道999」号の運行ダイヤを教えてもらえる。 付録も含め約400㌻のガイドだけあって、定番以外の観光スポットも豊富だ。神社巡りが好きな記者がいつか行ってみようと思っていた高見神社(同市八幡東区)も載っていた。「ものづくりと安全安心の神様が宿る」と紹介されている。 同神社は、明治時代から北九州で操業を続けてきた製鉄所の守り神。1940年に完成した 社殿について、波多野光隆禰宜(ねぎ)が「神社建築の第一人者たちが設計に携わり、製鉄所の関係者からも寄付をいただいて建てられました」と教えてくれた。堂々とした社殿を前にすると、「鉄は国家なり」といわれた時代の名残を感じた。 ガイドでも触れられているが、社務所では「鉄の街」ならではのお守りを授与していた。袋の中におはらいされた鉄球が入った鐵(てつ)の玉。波多野禰宜は「神社の歴史を知ってほしくて考案しました」と話している。