【郡山開発規制緩和】均衡ある発展目指せ(6月3日)
郡山市の市街化調整区域内で一部の幹線道路沿いの開発規制が緩和された。運転手の働き方改革により物流が停滞する「2024年問題」で、高まる物流施設需要に応えるのが主な狙いだ。産業振興や雇用拡大が期待されるが、野放図な開発は許されず、市域の均衡ある発展や景観との調和を忘れてはならない。 高速道路インターチェンジ(IC)の半径2キロの従来の範囲に加え、国道や県道など市が指定した幹線道路沿線で建築物の用途制限が緩和される。工場、研究開発施設、物流施設などを例示している。 南東北の要衝である郡山市には運送業、倉庫業などの物流施設が集積している。働き方改革で運転手の労働時間に上限が設けられたため、長距離トラックの運行を中継する物流施設用地を求める声は引きも切らないという。 既存の工業・物流団地はほぼ完売し、適地がないことから、郡山市は都市計画法に基づく市街化調整区域地区計画運用指針を4月に改定、市街化調整区域内の一部で開発に道を開いた。国道4号は市街地北部と南部、国道49号は郡山IC以西と田村町、県道は郡山南IC~国道4号、緑ケ丘周辺などが該当する。
地権者の協力や農地転用手続きなど要件を満たす必要はあるが、開発が促進され、物流拠点都市としての優位性を一層高める可能性がある。 規制緩和された地域は東北自動車道の通る市域西部が多い。一方、市域東部は産業集積度が低く、耕作放棄された農地が目に付く。市域西部との地域間格差を拡大させない施策を求めたい。 開発によって交通量が増えた場合、道路整備や交通安全対策など新たな課題が生じる恐れがある。農林漁業との健全な調和を基本理念とする都市計画法の趣旨に鑑み、安積開拓で形成された農村や中山間の景観、自然環境にも配慮が欠かせない。 新たな建築物の用途に地域振興に資する施設が追加された。農村人口減少に伴う地域コミュニティー低下と空き家増加を食い止める目的があり、農産品・特産品の直売所や観光施設などを想定している。住民自らが構想・整備し、農村部に活気を取り戻すのが望ましい。外部資本だけに頼らず、住民主役の自立的な地域振興を願う。(鞍田炎)