ゴルフ素人ほど下手に「ナイスショット」を言ってはいけない…初心者必見「最低限のかけ声マナー」
■初心者は「……ショット!」を強調して叫べ ゴルフのマナーはルールと違い、明文化されておらず風習みたいな扱いで、解釈の違いが生じやすいです。今回は最低限守りたい、かけ声のマナーを解説します。 まずはスタートホールで叫ぶ「ナイスショット」ですが、案外言うタイミングが難しいです。勢いよく同伴者のボールが飛んでも、途中で曲がってOBになり「どこがナイスショットだよ」とゲストが嘆くことがあります。その場合は「惜しかったですね」などと、フォローしておくのが大事かなと。 一般的には、インパクトのあるボールを打った段階で「ナイスショット」と言うのがマナーです。 ここでやってほしくないのは池ポチャなのに、ひとりだけ「ナイスショット」と場違いな声をかけること。かなり失礼に当たります。逆にナイスショットをしたのに、無言でいるのも失礼です。 最初は瞬時の判断が難しいでしょう。そこで咄嗟に声が出ない人は、付和雷同どさくさ作戦をお勧めします。これはみんながナイスショットと言った瞬間、追いかけて言うものです。コツはみんなが「ナイス~」と言ったら後半部分の「……ショット!」を強調して叫ぶこと。そうすれば時間的に間に合います。あとは、何食わぬ顔をして「凄く飛びますね」とおべんちゃらを言えば、なかなか気が利くやつと思われるでしょう。 また、たまに「アメリカじゃ『グッドショット』と言うんだよ」と、西洋文化を啓蒙する人がいますが「ここは日本ですから」と言って、相手にせず適当に流しましょう。 ナイスショットは基本的に誉め言葉です。言われて悪い気はしません。自分が打ったときに「今のは当たりが薄く、ナイスじゃない」と思う人もいますが、あえて言わないこともマナーのひとつです。
■目茶苦茶甲高い声で、長く「ファ~~~~~」 さて最近はビギナーが増え、ボールがコースから大きくそれることが頻繁に起きています。そういうときは「ファ~」と叫び、注意を促します。ファーは英語でforeと書き「前方注意」の意味となります。ファーを叫ぶのはキャディの大事な業務でした。今はセルフプレー全盛で、プレーヤーが叫ばないといけない重要なマナーです。 だから我々は、ゲストがボールを打って0.2秒程の間に「ナイスショット」か「ファー」のどちらを言うか判断せねばならない。 じゃボールの行方をしっかり見させていただきますと、ゲストの真後ろに陣取るや、それがマナー違反になります。ゴルフは打っている人の飛球線上に立ってはいけません。人の気配が気になってショットが打ちづらいからです。ついでに言うと、パットも背後に立つと目障りだし、パットのラインを盗み見する行為になりNGです。 肝心のファーですが、ボールの飛距離を考慮すれば、誰かが言ってから、追いかけてのファーでも充分効果的です。 ただファーの目的は、隣のホールのプレーヤーに危険を察知させるためなので、目茶苦茶甲高い声で、しかも長く「ファ~~~~~」ぐらい言うのが筋です。 万が一ボールが当たって怪我をしたとき、ファーを言った言わない、聞こえた聞こえないで責任の度合いが違ってきます。実際、同伴者が、隣のホールのゲストにボールをぶつけて、揉めた現場に立ち会ったことがありますからね。 セルフプレーの場合、ボールを打った人が悪いのですが、じゃ打った本人が即座にファーを言えるのか? それが難しいところです。やはり脇で冷静に見ている人が、ファーを言うのが筋でしょう。 本物のファーを聞いたことがない人は、一度キャディさん付きのラウンドを体験したほうがよいでしょう。本物は甲高い声で長く叫ぶし、演歌歌手のようにこぶしも効かせます。というわけでゴルフは、ファーをうまく言えたら一人前です。精進してください。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 木村 和久(きむら・かずひさ) コラムニスト 1959年生まれ。コラムニスト、作家、トレンドウォッチャー。近著に漫画家の福本伸行氏との共著『89ビジョン とにかく80台で回るゴルフ』(集英社新書)がある。 ----------
コラムニスト 木村 和久