悪いことだけじゃない!?長期金利上昇で「国の借金」の利払いは増大するが…家庭にとってはプラスに?
今年度の「利払い費」は8.5兆円を見込んでいたが…
金利が上昇するなか、日本の借金はどれくらいあるのか。「国の借金」とは国債や借入金、政府短期証券の合計で、財務省によると、9月末で1275兆6116億円。そのうち国債が1131兆円超で、その大部分は利払いや償還財源を主に税金とする普通国債と呼ばれ、その残高が1027兆円超だった。 たとえば、財務省が公表している普通国債の残高や、利払い費と金利の推移をグラフで見ると、アベノミクスで普通国債の残高が拡大する一方で、金利が低め、低めへと誘導されたことにより、利払い費がここ20年ほど毎年7兆、8兆円前後に抑えられてきた。今年度は当初計画で約8.5兆円を見込んでいた。 一方、財務省は金融市場の動向を見て、発行する国債の利率を引き上げてきている。10年もので、’22年3月までは数年にわたり0.1%にとどまっていた。今年7月からは0.4%だったのを、10月には0.8%へと大幅に引き上げている。 国債には固定利付型と変動利付型があり、固定利付型の償還期限は2年から40年までさまざま。国債が償還期限を迎えると、借り換えが多くなる。固定利付型の国債の利払い費は発行時の金利水準で決まり、今後の借り換えでは金利上昇により、利払い費が増大していくことになる。 ◆「借金」より「預金」が多い家計部門では逆にプラス? こうした悲観的な財政の見方に対し、専門家からは異論も出ており、国債の発行を抑えていく方法があるとの指摘がある。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長は、その一人だ。日銀の長期金利1%超の容認転換が「ちょっと早かった」と話しながらも、超低金利に誘導する「YCCの”形骸化”がはっきりした」とみている。そのうえで、こう話す。 「日銀が金利を抑制している姿勢は続けると思う。自然にまかせると2%、3%になってもおかしくないが、景気への影響が大きすぎる。日銀が国債を買い続けて、今後の数年は1%台にとどまると思う」 さらに、斎藤さんは、ゼロ金利時代に比べれば金利上昇で国債の利払い費が増えるが、「受け入れるしかない」という。一方、借金の多い政府や企業部門と違い、家計部門は借金以上に預金が多くあり、金利上昇は家計部門全体としてプラスという。