Aooo、エイハブ、Van de Shop……ボカロPの活動領域の変遷とバンドカルチャー再興の兆し
エイハブはメジャーデビュー、Van de Shopはアニメタイアップも担当
Aooo同様、エイハブも今年メジャーデビューとなったボカロシーン発のバンドだ。従来より「クィホーティ」「ケンカしようぜ」などの楽曲が人気を博していたが、今夏のオンラインイベント『YouTube Music Weekend 8.0』にて、エイハブというボカロP名が単身者の名義でなく、ソガケイスケ(Ba)、カゲヤマシュン(Vo)、コウイチ(Gt)、カゲヤマカズマ(Dr)からなる4ピースバンドの名称だったことを発表。ボカロ曲の投稿と並行したバンド活動の本格化を明言した数カ月後に、配信リリース「ある男」を以てメジャーシーンへの参画を果たしている。 上記のように2020年代前半でシーンに台頭したボカロPのみならず、過去にシーンを牽引した者、あるいは今後牽引するであろう新世代クリエイターを含め、この他にも様々なボカロP出身者によるバンドが直近で盛んな活動を行っている。 栗山夕璃(かつて蜂屋ななし名義で活動)率いるVan de Shopは、今秋放送のアニメ『ネガポジアングラー』(TOKYO MXほか)にてOPテーマ「イト」を担当。また、シーン黎明期に人気ジャンル・VOCAROCKの興隆の一端を担った梨本ういによるバンド・あらいやかしこも、2024年末に約6年ぶりのフルアルバム『WHY』をリリースする。 今夏久々の復活となった10代アマチュアミュージシャンの登竜門イベント『マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!』では、皆川溺(かつて23次元P名義で活動)がバンド名義・皆川溺集合体としてファイナリストに選出。また『ボカコレ2024冬』にて楽曲「ころしちゃった!」が高い評価を得た夏山よつぎによるネコロジックも、今後の活動を注視したいバンドのひとつだろう。 日本の音楽界にVOCALOIDというジャンルが誕生して20年。カルチャーの成熟に伴って、今や大勢のボカロP出身者が邦楽シーンの随所に散らばり、それぞれ業界を支えるクリエイターとして名を馳せている。 シンガー、コンポーザー、トラックメーカー、作詞家、作曲家、バンドマン――それぞれの道筋、その各所に偉大な先駆者たちがいる。それもまた音楽を生業にしたいと夢見る若者にとって、VOCALOIDが今後も魅力的な音楽ジャンルで在り続ける理由のひとつなのかもしれない。
曽我美なつめ