考察後編『全領域異常解決室』ラストまで「なんで!?」「まさか!」連続、続編にも期待
ミステリーからSFに、SFからアクションに?
二宮によって三度窮地に立たされた興玉。そこに登場したのは全決京都支部……! たしかに宇喜多がことあるごとに京都の存在をほのめかしてはいたけど、まさかここにきてその本物が。しかも室長の日野を演じるのは溝端淳平。日野に同行した豊玉の父・大和田は真壁刀義! 最終回にこんな豪華&意外性のあるキャスティングで重要そうな存在が登場するとは! 興玉たちを助けた直後、危険を冒してただの人間である雨野小夢(広瀬アリス)を助けに行こうとする興玉を阻む障壁と化す(四度目の窮地!)。慌ただしすぎないか? ここでも戦闘を挟み、やっとのことで小夢の元に駆けつけた興玉を待っていたのは真のヒルコ、内閣官房国家安全担当審議官・直毘吉道(柿澤勇人)。そして彼の正体は、永遠の命を得た人間・役小角だったのだ。ヒルコは神ではなかった。一対一で戦うこととなる興玉。ラスト2話で5回も危険な目に遭い、たびたびアクションシーンが挟まれる。ミステリーがSFに変わったと思ったら、ここに来てアクションドラマに……? ヒルコ側の意見は一貫して「いまの人間に絶望した」からやり直そうというものだった。その原因を全てSNSに求め、「SNSを見すぎている人間から死んでいく」という仕組みを作っていたのはかなり乱暴だなと思う。けれども、人間たちから何度もひどい目に遭わされて「人間は信用できません」と言いつつ、「それでも神は人間を守る」と諦めたような興玉たちを見ているほうが、やるせない気持ちになってくる。 自分が消える危険を冒してでも小夢を助けようとした興玉。神は信じないと言いながら、幼馴染の大月(田山由起)が言うならばと興玉を助けに来た荒波。神も人間も、行動原理の元には大切な人、好きな人を思う気持ちがある。 荒波の思いと興玉の思いが重なった。このドラマに登場する神はつくづく「人間らしい」神だ。
てんこ盛りの終盤、続編に期待
こうしてあらすじだけまとめてみると、とんでもないドラマだった『全領域異常解決室』。「なんで!?」や「まさか!」がたくさんあったけれど、毎回楽しめた。それはやはり、藤原竜也をはじめとする役者たちの力によるものだと思う。 それにしても、終盤のてんこ盛り感はすごかった。一言主神の「誰にでも変身できる」という能力だけでも連続ドラマができそうじゃないか。それに、いろいろと気になることは残っている。「事戸を渡す」ことで、神の記憶が全て消えたはずの小夢が興玉とすれ違うラストシーンで「呼び出しの鈴」を鳴らしたことも、二宮がベッドからいなくなっているのも。そしてほんのちょっとだけの登場だった京都支部も、名前だけ登場した「京都支部の尼寺さん」の存在も! 『全領域異常解決室』のこの先に期待しておきたい。 ●番組情報 『全領域異常解決室』(フジテレビ 毎週水曜よる10時~) 脚本_黒岩勉 演出_石川淳一、松山博昭、根本和政、都築淳一 プロデュース_成河広明、大野公紀 出演_藤原竜也、広瀬アリス、柿澤勇人、成海璃子、迫田孝也、ユースケ・サンタマリア、小日向文世 他 音楽_小西遼 オープニングテーマ_清水美依紗『TipTap』 エンディングテーマ_TOMOO『エンドレス』 FOD、Netflixにて全話配信中(有料) 釣木文恵>>ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆 まつもとりえこ>>イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
GINZA