Core Ultra(シリーズ2)にデスクトップ/ハイエンドモバイル向けモデルが登場! これまでのIntel製CPUとの決定的な違い
「ハイパースレッディング非対応」になったPコア/Eコアも性能アップ
ここからは、Arrow LakeのComputeタイル(CPUコア)の特徴を見ていこう。 Core Ultra 200Sプロセッサの場合、Computeタイルはパフォーマンスコア(Pコア)が最大8基、高効率コア(Eコア)が最大16基という構成となる。 Pコアは、Core Ultra 200Vプロセッサで初搭載された「Lion Cove」(開発コード名)だ。つまり、ハイパースレッディング(同時マルチスレッド)機構は非搭載となる。 過去の拙著でも触れた通り、Lion Coveの平均IPC(クロックあたりの処理命令数)は非常に高い。ゆえに、ハイパースレッディングに対応したとしても、その投資(トランジスタ数や消費電力)に見合った性能を引き出すことは厳しい。 ハイパースレッディングは元々、CPUの余剰演算器を有効活用する目的で搭載されてきた。現在実行しているスレッドとは無関係なスレッドの処理に対応させることで、アイドル(非活用)状態になっている演算器や他の実行ユニットを稼働できることが、動作効率面で何よりも意義深かった。しかし、IPCが良好になったこもあり、昨今のPコアではハイパースレッディングに対応する意義が薄れている。 前も言ったが、最近のIntelは「これなら、ハイパースレッディングに対応させるコストをEコアの増量に回した方が全体性能が改善するんじゃね?」という設計信条を持っているようだ。 結局のところ、ハイパースレッディングでは「CPUコアが完全に“分身”する」わけではない。IntelがLion Coveに対して「ハイパースレッディングは載せない」と判断したのは、パフォーマンス向上という面では理にはかなっている。ただし、競合CPUに対してスレッド数が減った(≒パフォーマンスを発揮しづらい)ように見えるのは確かなので、既存ユーザーに対して丁寧な説明が必要になってくるだろう。 Eコアも、Core Ultra 200Vプロセッサと同じ「Skymont」(開発コード名)を搭載している。元々、Eコアにはハイパースレッディング機構は搭載されていないので、そのあたりの仕様変更はない。 しかし、Core Ultraプロセッサ(シリーズ1)のEコア「Cresmont」(開発コード名)と比べると、「浮動小数点演算/AVX系SIMD演算のパフォーマンス改善」「アウトオブオーダー実行の範囲拡大」など、CPUコアとしての基礎性能を高める措置が施されている。 この効果はてきめんなようだ。Intelによると、第13世代CoreプロセッサとCoreプロセッサ(14世代)のEコア「Gracemont」(開発コード名)と比較した場合、整数演算のパフォーマンスはシングルスレッド/マルチスレッドの双方で最大32%向上し、浮動小数点演算のパフォーマンスはシングルスレッドで最大72%、マルチスレッドで最大55%向上したという。筆者としては「『Eコア』という呼び方で損をしている」という印象を持った。 このLion CoveとSkymontについての深い解説は、いずれ回を改めて行いたいと考えている。