「クーロンの法則」、じつはクーロンより先にキャベンディッシュが発見していたという「意外な事実」
物理に挫折したあなたに――。 読み物形式で、納得! 感動! 興奮! あきらめるのはまだ早い。 大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。 【写真】「クーロンの法則」は「万有引力の法則」のパクリなのか? 本記事では電磁気学編から、クーロンの法則とは何かについてくわしくみていきます。 ※本記事は田口善弘『学び直し高校物理 挫折者のための超入門』から抜粋・編集したものです。
点電荷の間の静電気力
電磁気学を語るうえで、欠かすことができないのが「クーロンの法則」である。 ご存じのとおり、帯電した物体どうしが近づくと、同じ極性の静電気は反発しあい、違う極性の静電気は引きつけあう力が働く。このときに発生する電気的な力を「静電気力」あるいは「クーロン力」(単位はニュートン〈N〉、『学び直し高校物理』では以下静電気力を用いる)という。 この静電気力は、2つの粒子の電荷の大きさ(電気量)の積に比例し、粒子間の距離の2乗に反比例する。電荷の単位はクーロン(C)で表す。ちなみに、数式を用いると、次の図のように表される。 数式を見ればわかるとおり、クーロンの法則は「逆二乗則」となる。「逆二乗則」は、前述のように、2つの物体に働く力の大きさがその間の距離の2乗に反比例して減っていくことをいう。距離が2倍になると強さは4分の1になり、距離が3倍になれば、強さが9分の1になり……といった具合だ。 クーロンの法則は、1785年、フランスの物理学者クーロンによって発見された。クーロンはみずから発明した「ねじれ秤」を使って、電荷の間に働く力の大きさが距離の2乗に反比例して減っていくことを実験的に証明した。そしてこの法則には彼の名前が冠された。 ねじれ秤がなければクーロンは逆二乗則を示せなかっただろうと言われている(実際、キャベンディッシュはクーロンに先駆けて逆二乗則を発見していたが〈未発表〉、全然別のやり方だった〈後述〉)。 ねじれ秤は、雑な説明をすると金属のねじれ弾性を用いた秤である。クーロンが実験装置を自分で発明した、というのは奇異に聞こえるかもしれないが、昔はけっして珍しいことではなかった。木星の衛星を発見したガリレオだって、自分で望遠鏡を作ったからそれができたんだし、雷の実験をしたフランクリンの凧を第三者が作ったとも思えない。 産業革命以前、18世紀前半までの科学の時代には科学的な発見は実験器具の開発とつねにセットだった。実際、金属のねじれを利用したねじれ秤は微細な力を観測するのに最適な装置で、それなしにクーロンは逆二乗則を定量的に実証できなかっただろう。